涸沼、保護意識高まる ラムサール登録10年 茨城

茨城県鉾田、茨城、大洗の3市町にまたがる涸沼が国際的に重要な湿地の保全を目指すラムサール条約に登録されてから28日で10年となった。豊かな生態系を育む湿地を将来に引き継ぐため、自然環境の保全に対する意識が高まりつつある。周辺地域を中心に、観光ガイドやボランティア団体が育つなど着実に裾野も拡大している。
涸沼は淡水と海水が混じる関東地方で最大級の汽水湖。湖岸延長は約22キロ、面積は9.35平方キロメートルに及ぶ。
「20世紀最後の新種発見」とされるヒヌマイトトンボは、1971年に茨城町の湖畔で見つかった。涸沼を代表する希少種で汽水性のヨシ原に生息する。特産のヤマトシジミは、繁殖保護を目的に伝統的な方法で漁が行われている。
涸沼は2015年5月28日にラムサール条約に登録。南米ウルグアイで同6月に開かれた第12回ラムサール条約締約国会議で、県と3市町に登録認定証が授与された。県内にある湿地の登録は単独では初めて。
絶滅の恐れがあるオオワシやオオセッカなどの鳥が見られ、スズガモは東アジア地域個体群の個体数1%を超える5千羽程度が渡来するなど、水鳥の重要な中継、越冬の場となっていることなどが評価された。
条約は湿地の「保全・再生」「ワイズユース(賢明な利用)」「交流・学習」を目指す。昨年11月に「水鳥・湿地センター」を鉾田市と茨城町の沿岸2カ所に整備し、三つの目標を担う拠点施設として活用が進む。これまで100人を超える「ネイチャーガイド」を養成したほか、野鳥観察や環境学習などの活動も根付きつつある。
地元3市町でつくるラムサール条約登録湿地ひぬまの会会長の小林宣夫茨城町長は「多様な生態系が育まれている涸沼がラムサール条約に登録され、10周年という節目の年を迎えられたことが感慨深い」との談話を発表。関係者に感謝を表し「今後も涸沼の環境保全とラムサール条約登録湿地の重要なテーマである賢明な利用を推進していきたい」とコメントした。
★ラムサール条約
正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。1971年にイラン・ラムサールで開かれた国際会議で採択され、75年に発効した。2025年4月時点で締約国は172カ国、登録湿地は2536カ所。日本は1980年に加入し、すでに53カ所が登録されている。