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ニホンジカ数 AI推計 茨城・大子の八溝山周辺 森林管理署森林総研 カメラ設置、画像解析

森林総研の飯島勇人主任研究員(右)から、カメラ設置の注意点を学ぶ関係者ら=5月13日、笠間市平町の北山公園
森林総研の飯島勇人主任研究員(右)から、カメラ設置の注意点を学ぶ関係者ら=5月13日、笠間市平町の北山公園
確認されたニホンジカ=昨年6月29日、大子町高柴(茨城森林管理署提供)
確認されたニホンジカ=昨年6月29日、大子町高柴(茨城森林管理署提供)


茨城県内でニホンジカの目撃情報が増える中、関東森林管理局と森林総合研究所(森林総研、同県つくば市)が、人工知能(AI)を活用して個体数を推計する一斉調査に乗り出す。同局茨城森林管理署などが同県大子町の八溝山周辺で6月初旬から調査を始める。森林被害や農作物被害は県内でまだ確認されていないが、全国で相次ぐことから、現状を把握し、今後の対策につなげる考えだ。

「(カメラは)映し出す範囲が人の目より狭い。カメラで見える場所を確認してください」。講師役の森林総研野生動物研究領域の飯島勇人主任研究員(45)は説明を始めた。

調査開始を控えた5月13日、同県笠間市内の林で調査用カメラに関する勉強会が開かれた。茨城森林管理署や県の職員ら25人が参加し、設置の際の注意点や撮影方法などを学んだ。

カメラは樹木に設置され、タイムラプス(低速度撮影)で5分ごとに撮影。AIで画像を解析し、動物が映っているか否かを自動で判別する。その後、人の目でニホンジカの映り込みを確認し、生息密度を推計していく。

関東森林管理局と森林総研は2013年、植栽木の食害や樹皮剥ぎなどニホンジカによる森林被害が増えていることから、被害対策に関する協定を締結。連携して被害状況の把握や分析などを進めている。

本年度の調査は茨城県を含む1都10県の管内24カ所で実施。同じ期間に同じ手法で一斉に行う。6~7月と9月中旬~11月中旬のそれぞれ一定期間撮影し、地域ごとに生息密度を調べる。

このうち茨城森林管理署は棚倉(福島県棚倉町)と塩那(栃木県大田原市)の両森林管理署と合同で、野生動物管理を手がける「日本自然調査機構」(茨城県水戸市)に委託。県内では大子町の八溝山周辺にカメラ12台を設置する。

ニホンジカは鳥獣保護管理法で、生息数が著しく増え、生息域が拡大している「第2種特定鳥獣」に分類。24年の林野庁のまとめでは全国の森林の約3割で被害が確認され、生息域が40年間で約2.7倍に拡大している。

農林水産省によると、ニホンジカの農作物被害額は全国で約70億円(23年度)。野生鳥獣による被害額全体で50.8%と最も多い。

県環境政策課によると、県内で森林や農作物の被害は確認されていないが、近年は目撃情報が増加傾向にある。22年の68件に対し、24年は193件と約2.8倍まで拡大した。同課は「繁殖力がとても強い。メスの定着は警戒する必要がある」と警鐘を鳴らす。

茨城森林管理署の三重野裕通署長(54)は「短期間で地域ごとの生息データが取れる。結果を基に関係機関と連携し、対策につなげたい」と調査へ意気込んだ。



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