ICT 工事効率化 3D測量や自動重機 茨城県内外、活用広まる
人手不足に対応するため、茨城県内外の建設業の工事現場で、情報通信技術(ICT)を活用する動きが広まっている。3次元(3D)データを使った測量や設計などにより作業を効率化し、生産性アップと省人化を図っている。国土交通省はICT工事の「原則化」を掲げており、近い将来、デジタル工事は当たり前の時代になりそうだ。
4月下旬、同県守谷市野木崎の利根川築堤工事の現場。ショベルカーが土砂を盛り、土木工事のつち音が響く中、近未来的な光景も広がった。
小型のドローン(無人機)が飛び、コンパクトな手持ち式測量装置を操作したり、複合現実(MR)ゴーグルを着けたりする作業員の姿が見られた。3Dデータを活用した測量や設計をはじめ、運行管理システムでダンプカーの効率的な運搬ルートを導き出したり、自動制御の重機を稼働させたりした。
この日は施工業者の潮田建設(栃木県)による見学会。国交省関東地方整備局の若手職員約20人にICTの現場に触れてもらうため、作業員が実演した。
■安全やコスト
同社は約10年前にICTを導入。課長の梁島千裕さんは効果を実感する1人だ。「若手技術者でもICT機器を使いこなせる。人を減らしても品質を上げられ、(人件費が浮いて)工事価格も下げられる」と話す。
利根川築堤の別工区を担う新井土木(茨城県常総市)もICTを活用。担当者は「人員が少なくて済み、安全性も確保され、工期も短縮できる」と指摘する。
ICTは効率化や精度・安全性の向上、コスト削減などの効果がある。従来工法よりも圧倒的に人手がいらず、危険箇所や広域な現場もICT機器で補える。
国交省は建設業でのICT普及を進める。2016年にはICT活用で全体工程の生産性を2割上げるとの目標を示した。24年度は自動化による完全無人化などにより、40年度までに「省人化3割」という新指針も打ち出した。
■就業者3割減
背景には建設業界の人手不足がある。国交省によると、就業者は1997年の約685万人をピークに減少。2022年は3割減の約479万人まで減った。高齢化は他産業より深刻で、60歳以上の技能者が4分の1を占め、10年後には大半の引退が見込まれる。
ICTに関して、国が購入補助や人材育成などを進めた結果、ICT施工実施率は国直轄の土木工事で87%(23年度国交省調べ)に上った。都道府県・政令市分は23%にとどまるが、同省は「実施件数は確実に増加している」と前向きに受け止める。国直轄工事は本年度から一部でICT施工を「原則化」し、標準的な手法に位置付けた。
高価なICT機器は数千万円ほどの物もあり、導入に二の足を踏む小規模事業者は少なくない。それでも梁島さんは「大規模工事になるほど、ICTなしでは現場を回せない」と必要性を説く。










