増やせ海外ランナー 茨城県内自治体、誘致に力 観光効果も運営負担課題

マラソンなどランニングイベントへの海外客の誘致に茨城県内の自治体が力を入れている。4月に開かれた日立市の「さくらロードレース」は昨年の10倍となる380人の外国人ランナーが出場した。訪日客(インバウンド)による観光振興の相乗効果も見込める一方、通訳の配置や外国語表記といった運営上の対策が必要で、負担面とのバランスが求められている。
「気持ちいい。最高」
4月6日、日立市で行われたさくらロードレースに香港から6人で参加した賴子駿(ライチチュン)さん(50)は、笑みを浮かべた。ゴール付近では、完走した外国人の出場者が仲間と写真を撮る姿が見られた。
同大会事務局の市スポーツ協会によると、外国人ランナーは25の国・地域に及び、内訳はタイ158人、香港99人、フィリピン28人、米国21人、台湾14人の順で多かった。
協会は今回初めて、国内の大会に外国人が参加できる専用サイト「RUN JAPAN(ラン・ジャパン)」に登録。例年、5カ国、50人前後だった外国人が急増した。
海外からの参加者増の背景には、アジア各国での「ランニング熱」の高まりがある。賴さんは日本好きで、趣味のマラソンに出場するため北海道や地方の大会にも出向く。「申し込みや参加が簡単で、運営面も良い」と評価する。
ベトナムからの出場ツアーを企画し、今回5人を案内した旅行会社経営のフイン・ファン・フォン・ホアンさんは「日本は桜がきれいで見どころも多い。スポーツと観光を一緒に楽しめる」と魅力を語った。
同協会は「大会当日はさくらまつりも開かれ、海外客にも好評。多様な要素が重なって増えた」と分析。宿泊や消費面でも効果が出たとみており、市は秋のフルマラソンでも誘致する。
ランニングイベントは県内で年間約50大会開催。フルマラソンは5大会あり、ラン・ジャパンへの登録や英語のサイト開設、海外出場枠の用意などをして外国人客に門戸を開く。
直近大会での外国人参加は、各事務局によると「勝田」83人、「かすみがうら」約70人、「つくば」22人だった。
一方、事務負担の課題を挙げる声も聞かれる。外国人専用の受け付けを外部委託で設ける自治体がある半面、通訳や多言語表記の有無はまちまち。ある自治体では、「海外客へのゼッケンや記念品の事前受け渡しは大変」と頭を悩ませる。
国内大会の外国人参加率は、東京マラソンが4割強、富士山マラソンが3割を占め、積極的な受け入れは地方大会にも広がりつつある。ラン・ジャパンなどの運営事業者アールビーズ(東京)によると、こうした影響で同サイトの会員登録者数は過去2年で急増し、今年は昨年の倍になった。
同社は「海外ランナーは日本の四季の美しさ、豊かな歴史、文化、おいしい食べ物、温かなおもてなしに注目している」と説明。大会発展へ向けた海外客の受け入れを促している。