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《広角レンズ》民間の災害用井戸注目 茨城・水戸市 HPに所在地公表 県内市町村 備えにばらつき

災害時用生活用水協力井戸を示す水戸市の看板=小美玉市内
災害時用生活用水協力井戸を示す水戸市の看板=小美玉市内
配電盤がコンセント式で停電時も稼働できる井戸=小美玉市内
配電盤がコンセント式で停電時も稼働できる井戸=小美玉市内


地震など自然災害時に断水が長期化した際の代替水源として注目が集まる民間の井戸。国は3月にガイドラインを策定し、災害時に民間の井戸所有者に協力してもらう手順を紹介するなど、地域の防災力向上を促す。茨城県内は水戸市などがホームページ(HP)で井戸の所在地を公表するなどして取り組むが、制度自体を設けていない市町村もあり、備えにばらつきが見られる。

昨年1月の能登半島地震で、井戸水が活用されて関心が高まった。国はこうした事例を受け、「災害時における水源の確保は全国の自治体に共通する喫緊の課題」とし、民間所有を主軸とした災害用井戸の活用を促している。

国が昨年11~12月に全国の市町村に行った調査によると、災害用井戸の取り組みを行っているのは約32%。民間所有の災害用井戸があるのは約23%だった。災害時の地下水活用の必要性を感じているのは約54%に上るが、地域防災計画に災害時の井戸活用を盛り込んでいるのは約38%で、活用を具体に想定するのは約16%にとどまった。

■敷地に看板

水戸市は災害で断水した際に、洗濯やトイレなどの生活用水を提供してもらえる井戸を2012年から登録。登録井戸には15項目から成る水質検査を行う。今年4月時点の登録数は345件。登録者の敷地入り口付近に看板を設けている。

市は登録井戸の所在地一覧や地図をHPに掲載しているほか、市民センターに掲示。停電で井戸から水をくみ上げるポンプが使えない場合でも、指定避難所に配備した発電機の利用が可能だ。県内では土浦市や鉾田市、つくばみらい市などでも同様の取り組みがある。

一方でプライバシー保護の観点などから、制度が整わない市町村もある。同県小美玉市の地域防災計画は井戸の活用は病院などのライフライン施設や避難所に限り、民間の協力を仰いでいない。民間の井戸について担当者は「前向きに検討する。計画の見直しを含めて対応したい」と語った。

■畑設置を開放

市内では市民の自発的な動きがある。ニラ農家の長谷部由美子さん(60)は備蓄可能な軽油を燃料とする発電機の購入をきっかけに、畑の井戸ポンプを災害時に開放することを決めた。五つの井戸の配電盤をコンセント式に工事して停電時も利用可能にした。今後は効率的に生活用水を提供できるよう蛇口を増やし、周囲に分かるよう看板も設けるという。

田畑にある井戸は一般住宅の敷地内にあるよりも「協力者の心理的負担が少なく、トラブルにもなりにくい」と長谷部さん。賛同する農家を増やした上で、自治体などが発電機を各地区に配備して燃料も備蓄するのが理想という。「農家の協力を募り、災害時に歩いて行ける範囲で水がもらえるような環境にしてほしい」と訴える。



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