《広角レンズ》障害者の工賃 茨城県低迷 B型事業所増、内職も要因

■県、脱却へ施設外就労支援
茨城県の就労継続支援B型事業所で働く障害者の工賃が低水準となっている。2023年度の月当たりの平均工賃は1万9882円で都道府県別で全国44位。過去10年間で見ても30~40位台で推移している。主な要因として県は事業所数の増加と、単価の低い内職を受注する事業所が多いことと分析。高い工賃につながる自主製品の販売や農作業、清掃など「施設外就労」への支援を強め、低工賃からの脱却を図る。
■最低賃金は適用外
B型事業所は、一般企業で就労が困難な知的・身体障害者らに働く機会を提供している。雇用契約を結ぶA型と異なり、個々の状況に応じた働き方ができる半面、最低賃金は適用されない。
県によると、23年度の月当たりの平均工賃は、支払われた総額を1日当たりの平均利用者数などで割った額。同年度から計算方式が変わった。県内455事業所が利用者に支払った工賃総額は14億771万円。1日当たりの平均利用者数は6156人だった。
同年度の月当たりの全国平均工賃は2万3053円。茨城県より3千円以上多い。全国の都道府県と比べると、茨城県は1位の徳島(2万9312円)と1万円近い差があり、近隣の群馬(2万2934円)、栃木(2万2574円)とも開きがある。
■1個で1円未満も
県内のB型事業所は増加の一途をたどる。22年度に400カ所を突破し、23年度はさらに50近く増えた。ある事業所の関係者は「水戸市だけで大都市クラスの数がある」と飽和状態を指摘する。
一方、受注内容は袋詰めや部品の組み立てといった内職(施設内就労)が中心だ。1個当たりの工賃は1円未満も少なくない。県の調査によると、24年度の主な作業に内職を挙げたB型事業所は50.1%に上る。
県は22年策定の第2次県総合計画で、平均工賃を25年度までに全国10位水準まで引き上げることを盛り込んでいる。現状について、県の担当者は「事業所数に対して受注量が少ない。障害者が自立した生活を送るには大幅な工賃向上が必要」と指摘する。
県は工賃引き上げに向け、事業所の経営意識向上と、発注元企業の単価引き上げを働きかける方針。併せて事業所が価格を設定できる自主製品の販売支援などに力を入れる。
■定期販売会で販路
県は月1回、自主製品の販売会「ポップアップショップ ルバート」を開いている。販路確保が狙いで、県庁などの会場を提供。20日にあった販売会に参加した「にじげんひたちなか」(ひたちなか市)は「これまで作品を披露する場がなかった。販売が進めば利用者の自活の道が開ける」と期待をかける。
利用者が農作業を通じて社会参加する「農福連携」も高い工賃が見込める。県は県共同受発注センター(水戸市)を通じて新たな受注を支援している。
農福連携に取り組む「たけのこワークス」(同市)は受注の9割が同センターを介している。同事業所の統括管理者、坂場浩子さん(55)は「23年度の平均工賃の月額は3万7千円。8年前と比べて2万円以上増えた」と感謝する。
県障害福祉課は「工賃向上は障害者本人の生きがいを高め、社会参加を促すために必要」と強調。その上で「全国10位水準の目標達成は相当ハードルが高いが、実現に向けて全力を尽くす」と力を込めた。