堤防高さ 衛星から観測 茨城県調査効率化、4年に短縮 水害への備え強化

管理河川の堤防の高さを効率的に調べるため、茨城県は本年度、地球観測衛星が観測したデータの活用を始めた。衛星利用測位システム(GPS)などによる従来の測量では、全ての調査が一巡するまで10年かかったが、4年ほどに短縮して完了できるという。堤防の変化をいち早く把握し、盛り土による修繕やかさ上げなどの対策を取ることで、水害への備えを強化する。
土で造成される堤防は、長い年月をかけて少しずつ沈む。地盤の性質から、場所によって沈下速度は異なるものの、測量しなければ具体的な沈下幅が分からず、目視では判断できない。
県河川課によると、管理する河川は216本。このうち堤防がある河川は54本ある。堤防の総延長は左岸と右岸合わせて約700キロに上る。
2019年10月の東日本台風では、県内にある多くの河川で堤防の決壊や越水が相次いだ。被害を受け、県は20年度から、人が現地を歩いて移動しながらGPS情報を受けて堤防の高さを観測。航空レーザーや航空写真による調査も行っていた。ただ全ての堤防を観測・調査するには10年かかるという。
23年6月の大雨では牛久沼(谷田川)が越水し、住宅や水田が浸水被害を受けた。下流で行われた工事と越水との因果関係を調べていた有識者委員会が、越水した3カ所を含む計6カ所で地盤変動により堤防が最大68~29センチ沈下していたことが越水の要因と結論付けた。県はさらなる効率化を検討していた。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測衛星を使った調査は、マイクロ波を照射し、地表に当たって反射する波から堤防の高さを観測する。精度は高く、実際の測量との誤差は数センチという。
県は観測データを定期的に収集、分析して変化があるかを確認。おおむね4年で全堤防を評価することが可能となり、観測時間の短縮や人件費などのコスト削減につながるとしている。
対策が必要な場所については、現地で人が測量して最終確認する。必要に応じ盛り土による修繕やかさ上げなどの対策を取る。
同課の担当者は「地球観測衛星のデータを有効活用して効率的に堤防の高さを調べ、大雨による堤防の決壊や越水を防ぎたい」と話している。