コメ高騰 茨城県内酒蔵直撃 主食用米へ転作の動き

コメの価格高騰で、茨城県の伝統的な酒造りへの影響が懸念されている。主食用米の需要が高まり、日本酒造りに適した酒造好適米(酒米)から転作する動きがみられるためだ。県酒造組合は酒造りに必要な米のうち、今年確保できるのは「全体の6割」との見通しを示し、不安を募らせる生産者や酒造業者への支援を要望。県は支援策を模索している。
「この状況はいつまで続くのか。なんとか頑張りたいが…」
1804年創業、鹿行地域の老舗酒蔵「愛友酒造」(潮来市)。酒米確保を巡り、8代目の兼平理香子社長は頭を悩ませる。
同社はこれまで、県オリジナル酒米「ひたち錦」をはじめ、全国各地のコメを使い、伝統の酒造りを今につなげてきた。コメ調達は、県酒造組合が県内の各酒蔵から需要を聞き取った上で一括して行っている。
一方で、今年は主食用米の価格高騰と需要増に伴い、生産者が酒米から転作する傾向にあり、確保が難航。兼平社長は「ひたち錦の作付をやめる農家もいて、4割減と聞いている」と顔を曇らせる。
育てるのに手間がかかる酒米は主食用米よりも高値で取引されている。同組合の浦里浩司会長は、転作などの動きを踏まえ、2024年比で6割ほど価格が上がると予測する。
計画通りに日本酒を生産すればコスト増、減らせば売り上げ減という状況で、酒蔵にとって死活問題。同社は値上げして対応するほか、ひたち錦を使う酒の種類を減らすことを視野に入れるも「まだ結論は出せない。消費者が離れてしまうのでは」(兼平社長)と不安を抱く。
農林水産省の資料によると、茨城県の酒米の出荷量は24年に451トンで、5年前の19年とほぼ同量を維持。清酒出荷量が減少傾向にある中、海外の日本酒需要が縮小する国内市場の分をカバーしてきた。
出荷量が安定していた酒米だったが、転作で状況は大きく変わった。5月27日、県酒造組合は県に支援を要望。コメ農家に酒造好適米の作付増を促したり、酒造業者のコスト増分を補助したりする施策を求めた。浦里会長は「業界最大の危機。日本酒造りができなくなる」と訴える。
県は今後、米価の推移を注視しつつ、県内各地の酒蔵からヒアリングを行う方針。まずは詳細な経営上の問題を把握した上で、具体策を検討したいとする。
県技術革新課は「酒蔵は古くから地域に根付いてきた主要な産業。人を呼び込む地域資源でもある」と強調。伝統的酒造りの文化と合わせ、守っていく必要性を示した上で「効果的な支援の在り方を考えていきたい」とした。