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5歳児健診 茨城県内9市町 医師ら専門職確保難航

5歳児健診で片足立ちをする子どもたち=常陸大宮市
5歳児健診で片足立ちをする子どもたち=常陸大宮市


未就学児の発達状況を把握して早期の支援につなげる「5歳児健診」を実施する茨城県内自治体が9市町にとどまることが12日までに、県や各市町村への取材で分かった。多くが医師や臨床心理士、保育士など専門職の確保に苦心している実態がある。健診後のフォローアップ体制や会場の確保も課題に挙げており、実施に向けたハードルの高さが浮き彫りとなった。

5歳児健診は乳幼児健診の一つで、自治体が任意で行う。5歳前後の時期は言語能力や社会性が高まり、言葉の遅れなどから発達障害の特性を見つけやすいことから、就学前に適切な支援につなげるのが狙いだ。こども家庭庁は2028年度までに全国100%実施を目指している。

地域の保健センターなどで受診でき、原則無料。医師や専門職が児童の身長や体重を測定。「片足で5秒以上立てるか」「しりとりができるか」「順番を待つことができるか」といった問診によって、運動機能や情緒、社会性の発達を確認する。

■切れ目なく支援

県の調査によると、県内では現在、日立と下妻、常陸大宮、行方、鉾田、茨城、大子、阿見、五霞の9市町が5歳児健診を行っている。水戸と土浦、北茨城、笠間、那珂、稲敷、かすみがうら、利根の8市町は来年度実施に向け準備を進めている。

本年度に健診を始めた常陸大宮市は対象の約170人を誕生日ごとに15~20人ほどに分けて、毎月1回実施。医師は小児科医ら3人の協力を得た。会場の総合保健センターは部屋を時間差で何度も利用して7項目ある健診をこなせるよう工夫する。

市はこれまでも、保育園や幼稚園で公認心理士らが幼児の集団生活の様子を観察。発達障害などが疑われた場合は「巡回相談」を行い、保護者と面談してきた。担当者は「5歳児健診との組み合わせでフォローアップ体制が充実し、就学前まで切れ目なく適切な支援につなげられる」と話す。

■会場選定も苦慮

一方、多くの市町村は実施に必要な医師や専門職の確保に難航している。常総市の担当者は「ほかの健診でも苦労している」と吐露。古河市や常陸太田市は「保護者に納得してもらい、適切な支援につなげるには、医師でも専門医の説明が必要」と指摘する。

このほか、土浦市は「対象の約800人を健診できる場が確保できない」と、会場の選定に苦慮する。高萩市は「市内の療育施設が満員でフォローの受け皿がない」と悩む。

国は自治体への費用助成を子ども1人当たり3000円から5000円に引き上げたほか、健診を担う医師の養成へ医師会などに研修費を支援している。

県少子化対策課は今後、市町村から現状を直接聞き取り、解決できる課題に対して支援する方針だ。「必要に応じて国への要望も行いたい」としている。

★乳幼児健診

乳幼児を対象に市区町村が実施する健康診査。身長や体重を計測したり、各種検査で栄養状態や病気の有無を確かめたりする。親が育児の悩みを相談する機会とするほか、児童虐待の早期発見にもつなげる。1歳半と3歳の健診は母子保健法で実施が義務付けられるのに対し、5歳児健診は任意の実施となる。



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