建設費高騰で公共事業打撃 財政圧迫や入札不調 茨城県内自治体

建設費の高騰が、茨城県内自治体の公共事業に大きな打撃を与えている。財政上の負担が増えることへの懸念や入札不調により、学校建設の延期や工事の遅れ、設備の縮小などを余儀なくされる事態が相次ぐ。想定を上回る資材費の高騰と作業員不足による人件費の高騰は市民生活や教育環境に影を落としかねず、自治体は頭を悩ませている。
高萩市では2028年度をめどに高萩小・東小・高萩中の3校を統合し、義務教育学校を開校する計画が24年度末に大筋でまとまっていたが、建設費高騰が水を差した。
市教委が22年度に試算した学校と体育館の建設費は36億5800万円。資材費高騰を受け、24年度に面積を約1割減らして再試算した結果、建設費は58億2890万円に上振れした。
これを受け、市は内部で建設時期を再検討。建築費の上昇や財政の圧迫などを理由に即時実行が難しいと判断した。5月8日の市議会全員協議会で、大部勝規市長は「時間をかけてしっかりとした検討が必要」とし、開校延期を表明した。
統合と義務教育学校の開校は、児童生徒の減少や施設の老朽化、津波浸水想定区域内の立地解消が背景にある。市教委によると、今後の開校時期は未定で、担当者は「子どもたちのために何とかしたかった」と肩を落とす。
▼価格増で対応
つくばみらい市は建設費高騰のあおりを受け、設備の縮小や入札不調による予算増額を迫られた。
同市はつくばエクスプレス(TX)沿線の人口増で生徒数も増加。今後、教室不足になる恐れがあり、22年度から新たに中学校を建設する計画を進めてきた。情勢を踏まえ、入札段階でプール建設を見送るなど、コストを見直した。
しかし、24年7月に公告した一般競争入札に参加業者は現れなかった。市の担当者は、事業者側の想定価格と予定価格に「金額の差が生じた」と説明する。
市場動向を調査し、予定価格を約1割増額。99億3740万円で再入札し、落札された。27年度の開校へ「工事が進み、安堵(あんど)している」と担当者は胸をなで下ろす。
▼人件費も上昇
入札不調は27年4月に開校予定だった県立神栖特別支援学校(仮称)にも及んだ。県営繕課によると、今年2月公告の入札では事業者の応募がなく、再入札を行う方針。最新の工事単価で予定価格を再計算する。
公共工事の前払い金保証などを行う東日本建設業保証など3社がまとめた県内の建設業景況調査(1~3月期)によると、資材価格の景況判断指数(BSI)は35.5。5年前(20年1~3月期)に比べ20ポイント上昇した。建設労働者の賃金は27.5で、同期比7ポイント上昇。資材・人件費が上振れしていると感じる企業が増えている。
県建設業協会の会員企業は「全体的に資材費と人件費が高騰しているのは間違いない。(行政の予定価格は)実情に追い付いていない。現場としては厳しい」とコメントした。