天心の思想、実像に迫る 専門家2人が対談 北茨城・五浦美術館

美術思想家の岡倉天心について考える対談イベント「日本美術院の系譜-五浦で岡倉天心を語る-」が21日、茨城県北茨城市大津町の県天心記念五浦美術館で開かれた。天心ゆかりの日本美術院同人の手塚雄二さんと同館長の小泉晋弥さんの2人が登壇し、残された逸話や記録に触れながら天心の思想や実像に迫った。
イベントは茨城大五浦美術文化研究所開設70周年事業の一環で、大学や同美術院関係者、一般来場者の計約70人が参加した。
手塚さんは、天心の系譜で自身も師事した日本画家の平山郁夫さんについてトークを展開。平山さんが若い頃から教授になるなど将来像を描いていたと考察したのに対し、小泉さんは「天心も若い時に(文部大臣になるなど)人生ノートを書いていた」との逸話を紹介した。
手塚さんは「絵描きではない天心が、絵描きにどう教えていたのか」と疑問も提起。小泉さんは、弟子が描いた作品の批評会を例に挙げ、画家の素質に合わせ「言葉を選びながら指導していた」と語った。
さらに、手塚さんは東京芸大の助手時代、平山さんから「絵を教えては駄目。背中を見せなさい」と指導された思い出を回顧。小泉さんは、天心が東京美術学校を開校する際、「(講師に招いた)高村光雲に言ったことと全く同じ言葉」と共通点を指摘した。