《ROOTS 茨城人》アダストリア専務取締役 福田泰生さん(47) 水戸市出身 必要とされる会社に

創業者の福田哲三氏を祖父、現会長の三千男氏を父に持つ。創業家でありながら、歩んできたキャリアはたたき上げ。豊富な現場経験を経て昨年、専務取締役に就任し、「この会社をどれだけより良く、長く続けられるか。生きがいを持ってやっている」。静かな口調に熱がこもる。
2005年に入社。翌年、自社ブランド「グローバルワーク」の店舗スタッフとなった。取締役として入社した父三千男氏とは対照的な駆け出しだった。
入社後は創業家であることを意識し、失礼や失敗のない振る舞いを心がけた。肩肘張って仕事をする中、上司の女性から「あなたが思うほど、誰もあなたのことを見ていない」と言われ、ハッとした。「僕が見なければいけないのはお客さまだ」。30歳になる頃、肩の荷が下りた。
11年には、東日本大震災の被災地に出張店舗を出した。6000点に及ぶ服の店をわずか1時間で設営し、避難所に貴重な買い物体験を届けた。難しい事業だったが、メンバーの知見が凝縮され、「とても1人ではできないことが完成した」。来店した中高年の女性が涙を流して服を手に取っていた。「仕事はこうあるべきだ」。専務になった今も忘れられない経験だ。
「なくてはならぬ企業であれ」。14年に亡くなるまで仕事を気にかけてくれた祖父哲三氏が遺した言葉だ。その理念の下に、地元プロスポーツチームを支援するほか、千波湖(茨城県水戸市千波町)に自然や食、スポーツ体験などが楽しめる施設「千波公園」の整備も予定する。
年齢を重ねてから、歴史と自然が同居する故郷の良さに気付いた一方、人口減に寂しさを感じる。「水戸で産声を上げた会社。地元の皆さんに喜んでもらい、『なくてはならぬ』と思ってもらえるよう、経営のかじ取りをしたい」
■ふくだたいき
1978年4月11日生まれ、茨城県水戸市出身。米オハイオ州のフィンドレー大経営学修士課程修了。姓名判断の字画上、仕事では「泰己」を使用している。