北茨城市が新電力会社 市有地に太陽光発電 余剰電力買い上げ供給も

茨城県北茨城市は、地域新電力会社「北茨城電力」(仮称)を設立する。市の施設に太陽光発電を設置するほか、市民や企業に補助金を出し、設備導入を促進。発電された余剰電力を買い上げ、市内の公共施設などに供給することで、地域経済の活性化と脱炭素化を図る。本年度中の設立、2027年度の供給開始を目指す。
市は今月、環境省の「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金(重点対策加速化事業)」に県内で初めて採択。9億5000万円の交付金を受け、地域経済循環型の脱炭素化事業に乗り出す。県内市町村による新電力会社設立は稲敷市に次いで2番目。
新電力会社は北茨城市のほか、金融機関などが出資し、電力販売や省エネサービス事業を行う予定。当面は市の施設や補助対象から自家消費後の余剰電力を買い上げ、公共施設に供給する。同社と連動した市の施策は▽市の施設への太陽光パネル設置▽世帯や企業への設置費補助▽ソーラーシェアリングの設置費補助-など。
太陽光パネルは旧清掃センター跡地(同市関本町関本中)と小中学校などの屋根に整備。学校への設置は発電事業者が施設に太陽光パネルを無償で提供・管理する代わりに施設側が事業者に電気料金を支払う仕組み「PPA(電力購入契約)」を採用する。
市民や企業向けの補助では太陽光と蓄電池のセット導入と余剰電力を新電力会社に売電することを条件に、一般家庭に最大82万円、企業には最大133万円を助成。省エネ・断熱性の高い住宅「ZEH」導入の場合はさらに助成を上乗せする。
農業と太陽光発電を同じ土地で行う「ソーラーシェアリング」の設置費補助では農家や企業に費用の半額を助成。収益の増加が見込め、耕作放棄地の解消や高齢化する農家の担い手確保など地域課題の解決にもつなげる。
市生活環境課脱炭素推進室によると、民間の設備導入費などを含む総事業費は23億4000万円。二酸化炭素の削減量は年間4000トン、発電量は年間最大約900万キロワットアワーを見込む。
市は現在、プロポーザルを実施し、事業計画や料金、出資比率などを調査。軌道に乗れば、新たな電源の開発やPPA事業参入、市内の企業・各世帯への供給も視野に入れる。