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《広角レンズ》選定療養費 学校、救急要請で苦慮 茨城県「緊急時 迷わずに」



緊急性のない救急搬送患者から「選定療養費」を徴収する茨城県主導の制度で、学校現場が救急車を呼ぶかどうか判断に迷うなど対応に苦慮している。学校側が救急車を呼び、緊急性が認められないと支払いは保護者負担になるためだ。県内小中学校で数件確認され、県は情報発信などの対応に乗り出し、要請控えが起きないよう「命に関わる緊急時は迷わず救急車の要請を」と呼びかけている。


同県水戸市では昨年12月の制度開始後、教員が救急車を呼んだが緊急性がないと判断され、保護者が選定療養費を支払ったケースが2件確認された。

市教委によると、1件目は2月、中学生が体育の授業で顔にけがをし、出血があったため、教員が救急車を要請。もう1件は1月、小学生が手を負傷し、費用負担について保護者に説明した上で救急搬送した。

同県つくば市でも保護者から徴収したケースが1件あった。市教委によると、児童が頭部にけがをし、教員が救急車を要請した。

県によると、児童生徒の体調不良で学校が救急車を呼び、緊急性が認められなかった場合、選定療養費は保護者負担となる。

「『たいしたけがでもないのになぜ救急車を呼んだんだ』などと保護者から責められることを懸念するあまり、教員が救急要請をためらい、子どもたちの安全を損なうのではないか」。県内のある教育関係者は不安を漏らす。

■除外

選定療養費の対応に苦慮する学校から2月、県に相談があった。これを受け県は3月、県内の市町村教委を対象に緊急会議を開催。救急車を呼ぶ判断基準を不安視する声が多く上がったほか、学校を制度から除外するよう求める意見も寄せられたという。

県は4月下旬、学校現場の救急搬送状況について実態把握に乗り出した。市町村教委から事例を収集。5月末までの約1カ月間で約20例が寄せられた。緊急性が認められなかったり、支払いを巡りトラブルになったりしたケースの報告はなかったという。今後も引き続き情報を集め、学校現場と共有する考えだ。

併せて県は、救急車を呼ぶか判断に迷った際は、県の救急電話相談を利用するよう市町村教委に通知。相談で呼ぶべきと助言された場合、選定療養費を徴収されないことを伝えた。

県南地域のある自治体教委は、万が一を回避するためにサポート体制を整え、「ためらわずに救急車を呼んで」と現場に説明。一方、別の教委幹部は制度に賛同するが、「電話相談後、救急に改めて説明すると対応が遅れる」と頭を抱える。

■責任

学校以外でも、教育現場の徴収見直しや検証を求める動きが相次ぐ。

「苦痛を的確に伝えにくい子どもの特性を鑑みると、教育現場で救急要請が必要か判断するのは非常に難しく、教職員に責任が重くのしかかっている」「選定療養費を気にかけて救急搬送をためらい、手遅れになってしまうことは絶対に避けなければならない」

水戸市議会6月定例会に、市民団体が陳情を出した。小中学校などを徴収対象外とする意見書を県に提出するよう求めており、同県ひたちなか市議会にも同じ内容の陳情が出ている。

つくば、同県取手の両市議会は、県に対し、学校現場での徴収状況の調査、検証を求める意見書を可決した。

学校現場の選定療養費について、県は現状「除外対象とする考えはない」とする。その上で「すぐに病院で診てほしいと思う症状と緊急性とは異なる」と制度や判断基準への理解を求めるとともに、「命に関わる緊急事態と判断した際は迷わず救急車を呼んでほしい」と呼びかけている。



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