《広角レンズ》HPVワクチン、男子も 茨城県内7市町が接種助成



子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)を巡り、男子へのワクチン接種費を助成する自治体が増え始めた。国は接種の有効性を認めているが、現在は任意接種のため費用の全額が自己負担。茨城県内では水戸、龍ケ崎、河内など7市町が助成に乗り出している。医療関係者は「HPVワクチンは女性だけでなく男性のがん予防にも有効」として他自治体へ助成拡大を呼びかけている。
■81カ国、男女とも公費
厚生労働省などによると、HPVは女性の子宮頸がんをはじめ、性別に関係なく中咽頭がんや肛門がんなどの原因となるウイルス。主な感染経路は性交渉のため、ワクチン接種により男性自身の感染だけでなく、女性の感染リスクも抑制できるとされる。
中でも、中咽頭がんは世界的に増加傾向にあるとされ、国立がん研究センターによると、日本人患者の5割以上がHPVに起因するという。
厚労省は男子のワクチン接種の有効性や安全性を認め、公費による定期接種化の議論を進めているが、実施には至っていない。一方、世界保健機関(WHO)の資料によると、海外では米国やスウェーデン、ブラジルなど81カ国で、男女ともに公費による定期接種が実施されている(5月末現在)。
■子育て支援の一環
男子にHPVワクチンを接種する場合は、任意接種のため自費となり、3回の接種で5万円前後かかる。 県内では昨年度、水戸、龍ケ崎、大子の3市町が男子への接種費助成を開始。本年度には土浦、石岡、鉾田、河内の4市町も助成に踏み切った。男子の接種費助成の対象は、7市町ともに女子の定期接種と同じ小学6年~高校1年相当。
水戸市は子育て世帯の経済負担軽減などを図る「こどもまんなか応援サポーター」を宣言しており、助成はその一環。国が女子の接種勧奨を再開したことを契機に、男子の接種も進めるべきと判断した。
市感染症対策課は「対象年齢から外れた男性でも中咽頭がんなどの予防になる。幅広い年齢がワクチン接種を受けられる環境を整えたい」としている。
■医師「広報充実を」
しかし、昨年度に助成を始めた3市町村は接種率が低調だ。
水戸市では、対象者約6000人のうち、年度内に1回目の接種を受けたのは約3%の183人にとどまった。龍ケ崎市も同1.4%の23人、大子町は同12.4%の26人だった。
接種率を上げようと、水戸市は本年度、市医師会などと連携して助成内容の周知に乗り出した。今年4月に開始し、数件の問い合わせがあるという土浦市は、アプリ配信や学校を通して接種を呼びかける方針だ。
産婦人科医で県医師会の長田佳世常任理事は「HPVは一度感染すると排除できず、体内に潜伏する。中咽頭がんなど検診のないがんもあり、ワクチンによる1次予防が重要」と指摘。男性自身を守るという視点がまだ広く知られていないとして、「助成とともに広報の充実が必要」と述べた。