鉾田PFAS調査拡大 井戸59カ所 目標値超過 市民「早く原因究明を」 茨城

有機フッ素化合物「PFAS」のうち発がん性が指摘される「PFOS」「PFOA」の合算値が、茨城県鉾田市内の井戸で国の暫定目標値を超えたと発表されてから半年近くが経過した。県と市ではこれまで、範囲を広げながら井戸の水質調査を5回実施し、59カ所で超過。最大で目標値の26倍に上った。上回る井戸は拡大を続けており、市民からは「原因を突き止めて」との声も上がる。
県と市が最初に発表したのは1月14日。市内の井戸7カ所のうち4カ所で、水1リットル当たり50ナノグラムとする国の暫定目標値を超過したと明らかにした。最大値は、目標値の約15倍の770ナノグラムだった。
県が2022、23年度に行った河川でのPFAS調査により、市内の鉾田川で約1.4~2倍の値が出たことを受け、県と市が同河川流域の地下水への影響の調査に踏み切った。
環境省の手引きに基づき、最初の発表以降は、目標値超の井戸から約500メートル離れた位置にある飲用井戸を複数選定し調査する形で、範囲を広げていった。しかし、当初の想定よりエリアが広範になり、既存の方法では特定に時間がかかると判断。5回目の調査では、基準の距離を1キロ程度に拡大するとともに調査件数も増やした。
これまでに調査した井戸は計90カ所。うち59カ所で目標値を超え、最大値は26倍に当たる1300ナノグラムだった。井戸水の飲用を控えるよう、個別訪問で呼びかけたのは計1835世帯に及ぶが、現時点で健康被害は確認されていない。
調査範囲は徐々に拡大しており、今後の調査では市域を越え、隣接市町も調査対象になることが想定される。県としてはPFASの影響エリアを特定するため、各自治体に協力を求め調査を実施する予定という。
PFASのうち、PFOAは水や油をはじく製品の加工や界面活性剤など、PFOSは泡消火剤や半導体製造などに幅広く使われてきた。ともに現在は製造・輸入が原則禁止されている。
市内で両物質を扱っていた工場や施設は現在のところ確認されていない。また5回目までの調査では、極端に濃度の高いエリアも検出されておらず、原因は不明のままだ。
両物質への対応の仕方にも難しさが残る。目標値はあくまで飲用水としての指針で、それ以外の指針はなく、市の担当者は「新たな基準を提示してほしい」と強調。現時点では「目標値を超えた井戸水を飲まないでと呼びかけ、市民の安全確保を図りたい」と語る。
自宅に井戸を所有する市内の50代男性は「調査結果が公表されているが、数値の意味が見えてこない。人間にどのような影響があるのか、分かりやすく説明してもらわないと対応できない」と指摘。調査範囲が広がり続ける中、「まずは原因を突き止めてほしい」と訴えた。