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《連載:参院選茨城 思いをどこへ》個人経営 厳しさ増す

スーツにアイロンをかける鈴木千弘さん=筑西市丙
スーツにアイロンをかける鈴木千弘さん=筑西市丙


■老舗「継がせられない」

茨城県筑西市のJR下館駅前の商店街で、約100年続く老舗「鈴木ドライクリーニング店」(同市丙)。真夏へと移り行く7月上旬、店内は乾燥機やスチームアイロンの排熱で、熱気が立ち込めていた。

「お客さんに喜んでもらえるように」。店主の鈴木千弘さん(63)は暑さを苦にもせず、黙々とアイロンがけを続けた。

日々、作業に奮闘する中で不安を募らせるのは、近年の光熱費や資材の高騰だ。「仕事道具の洗濯機や乾燥機、ボイラーには全て電気が必要」。石油が原料のドライクリーニング用洗剤、プラスチック製ハンガーや包装用ビニールも値上がりしている。

店は祖父が1926年に開業。その後、父とともに複数の従業員を雇いながら切り盛りしてきた。高校2年の時、父が亡くなってからは祖父と従業員が店を守り、25歳のころに店を継いだ。現在は妻の澄江さん(57)と2人で経営している。

店を継いだ38年前は「飲食店の従業員が着る白衣や帽子の依頼が多く、街の買い物客も利用してくれた」。商店街に店が立ち並び、にぎわいがあったという。現在は「閉店した店が目立つ」と嘆く。

時代が進み、家で洗える衣服が増えたほか、安価でサービスを提供するクリーニングのチェーン店が台頭した。コロナ禍が客数の減少に拍車をかけ、依頼は店を継いだ当時の5分の1程度まで減った。

さらに現在、追い打ちをかけるのが光熱費高騰。店を取り巻く環境は、年々厳しさを増す。店の老朽化も踏まえれば「子どもには継がせられない」。

しかし、地域密着の老舗として誇りは失っていない。「長く顔を合わせているからこそ、お客さんの好みや要望に応えることができる」と話す。

「私たちのような店が安心して続けられるよう、国にはきちんと考えてもらいたい」。個人経営の店がこれからも地域とともに歩めるよう、具体策を講じるよう求めた。



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