カワウ食害減少へ 漁協や茨城県連携 ドローン活用し繁殖抑制 夏場のアユなど被害深刻

茨城県を含め全国の内水面漁業で魚の食害が問題となっている大型水鳥のカワウ。今年新たに、県内水面漁業協同組合連合会(同県水戸市)と久慈川漁業協同組合(同県常陸大宮市)、茨城県の3者が連携し、ドローンを活用した繁殖抑制に乗り出した。特にアユの被害が課題となっており、関係者は「全国から釣り人が来る。連携し少しでも食害を減らしたい」と意気込む。
3月から、同県ひたちなか市新堤の県内最大のコロニー(集団営巣地)で、繁殖抑制の駆除を試験的に始めた。ドローンを使い、ドライアイスを巣に落下させ、卵を冷やしてふ化させない仕組み。ドライアイスは色付きで、場所を識別できるようにしている。
環境省などによると、カワウは魚食性の鳥で、幅広い水域で潜水して魚類を採食する。1970年代に全国で3000羽以下に激減したが、80年代以降に増加。河川が浅くなったり、人けが減ったりするなど、捕食しやすい環境に変化したことが一因とみられる。
県によると、2024年の県内推計生息数は6011羽。22年に5491羽、23年に6641羽と近年は横ばいで推移し、県水産振興課は「特に夏場のアユの被害が大きい」と指摘する。
久慈川漁協によると、同川は天然遡上(そじょう)のアユが多く、11月までのシーズン中は全国から釣り人が訪れる。毎年、6月1日のアユ解禁日に大きなアユが釣れるようにと、養殖ものは静岡県内水面漁業協同組合連合会を通して購入。4~6月に同川と支流に計2000キロの稚アユを放流している。
久慈川漁協は「いろんな魚種が食べられ、中でもアユが多い。1羽で1日約30匹も食べてしまう」と嘆く。6月下旬、同川にアユの友釣りに来ていた水戸市、角田恒巳さん(80)も「カワウはすごく増えている。釣り人にとっては敵」と実感を語った。
危機感が募る中、これまでも3者は連携し、猟銃での駆除を進めてきた。一方、被害軽減で大きな効果は見られず、ドローン活用の新たな一手を打った。今後も繁殖期の間、複数回の実施を予定している。
同課の小曽戸誠課長は「カワウは内水面での大きな課題と認識している。対策を進めたい」と強調。同漁協の石井修組合長(69)は「食害を少しでも減らすと同時に、魚が隠れる場所をつくるための川づくりも必要」と、多角的な取り組みの重要性を示した。