障害者施設指定取り消し 茨城県 不正受給や虐待確認 牛久

茨城県牛久市岡見町の重度心身障害者グループホーム「オルオル」で自治体からの給付金の不正受給や虚偽報告、従業員の虐待行為があったとして、県は18日、同施設を運営する一般社団法人オルオル(越戸利江子代表理事)に対し、障害福祉サービスの事業所指定を11月1日から取り消す決定をしたと発表した。同施設は11月以降、別法人が事業を引き継ぐ予定で、県も必要に応じた支援に取り組むとしている。
指定取り消しは障害者総合支援法に基づく最も重い処分。不正受給を巡り、県が障害者施設に対して処分するのは2010年2月以来3例目で、同法が施行された13年4月以降では初めて。
同法人は22年4月1日に指定を受け、同施設の運営を開始。定員は10人で、現在の従業員は看護師や支援員など約20人。医療的ケアが必要な重度の知的障害者と身体障害者が利用している。
県によると、22年5月~24年8月の間、当時入居していた利用者6人の外泊が複数日あったにもかかわらず、施設でサービスを提供したことにし、牛久市と同県つくば市が支給する給付金計約305万円を不正受給した。
この不正の事実を隠そうと、業務日報を改ざんして同期間における利用者の外泊をゼロとし、県と両市に提出。県には利用者が外泊せずにサービスを受けたとする資料を提出した。
このほか、24年4~7月上旬の間、従業員の1人が強度行動障害のある利用者に対し、行動を抑える際に首を絞めたり頭や腹を殴ったりする暴行を週に2回程度行った。
県は虐待の内部通報を受け、同7~11月の間に計5回、特別監査を実施。業務日報に不審な点があったことや従業員の聞き取りなどから、越戸代表理事の判断で不正受給や虚偽報告が行われたと認定した。
県によると、越戸代表理事は「水増し請求の認識はあった」と不正を認め、従業員は「自分の未熟さで虐待をしてしまい反省している」と話したという。両市は今後、不正に支給された305万円の返還を求め、法人側も応じる方針。
県障害福祉課の伊藤康司課長は不正について、隠ぺい行為も含め「悪質性が高く恣意(しい)的」と強調。従業員の虐待にも対応しなかったとし、「総合的にみて指定取り消しとした」と説明した。
■不適法認め代表理事謝罪
指定取り消し処分となったグループホーム「オルオル」。運営する一般社団法人の越戸利江子代表理事は、代理人弁護士を通して「不適法な行為により、ご迷惑やご負担をおかけしたことをおわび申し上げる」とのコメントを出した。
同法人は、家族に重度障害者がいる当事者らによって2023年6月に設立。今回の指定取り消しについて、事実関係は争わないとしている。不正請求を巡っては、理事らの給付金に対する認識の甘さなどが招いたと謝罪し、「今後速やかに返還する」とした。
虐待に関しては職員の支援スキルなどが不十分で、他職員による教育や指導が行き届かなかったとした。
11月1日以降は別法人に事業を引き継ぐ予定で、「円滑な事業継承を通じ、重度障害者向けの福祉の拡充に貢献できるよう尽力していく」とコメントした。