全国高校野球茨城大会回顧(上) 明秀日立2度目V

■強力打線、能戸けん引 中岡好投、抜群の安定感
第107回全国高校野球選手権茨城大会は、明秀日立が攻守で盤石の戦いぶりを見せ、3年ぶり2度目となる夏の甲子園出場を決めた。91校84チームが熱闘を繰り広げた今大会を振り返る。
明秀日立はチーム打率3割5分3厘と県内屈指の強力打線が猛威を振るい、全6試合中3試合でコールド勝ち。大会を通じて43得点を奪った。
中でも光ったのは、リードオフマンの能戸輝夢(3年)主将だ。打率5割で全7安打のうち長打はチームトップの5本をマーク。高い出塁能力と長打力で打線をけん引した。準々決勝で走塁の際に左足首の靱帯(じんたい)を断裂し、準決勝から控えに回ったが、決勝では九回に代打として出場し中前へとクリーンヒット。左脚をかばいながらも一塁へ走るガッツを見せ、士気を高揚させた。
この試合は野上士耀捕手(同)も輝きを放った。同点で迎えたタイブレークの十回無死一、二塁で値千金の勝ち越し適時打を放ち、指揮官の強攻策に応えた。その裏には無死から捕前に転がったバントを素早く処理して三塁封殺。強気の守備で流れを渡さなかった。
ターニングポイントとなったのは、霞ケ浦を7-2で破った準決勝だろう。能戸主将がけがでベンチスタートを余儀なくされたが、中軸から1番に打順が変更となった入江将気(同)が2安打2打点、スタメンに抜擢された清瀬健真(同)も2打点の活躍。代役を務めた選手たちが自身の役割を全うし、昨夏覇者を相手に勝ち切った。
投げては背番号「6」の中岡誠志郎(同)の存在が非常に大きかった。背番号「1」の中山莞近(同)が防御率3.86と苦しんだが、中岡は5試合で32回2/3を投げて防御率0.55と抜群の安定感で投手陣を助けた。
特に決勝での火消しは見事だった。1点リードの三回無死一、二塁から救援して最少失点に抑えると、その後も二段モーションやクイックモーションを時折見せるなどの工夫もこらし、8回3安打1失点(自責0)の好投。最終回は味方の失策で1点差に迫られ、なおも2死一、二塁のピンチを背負ったが、動じることなく最後の打者を三振に打ち取った。
「子どもたちの成長に感謝している」と優勝後に語った金沢成奉監督(58)。主力の不在、エースの不調を全員野球でカバーして勝ち上がったところに、ナインの強さを感じた。
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