てんかん保護帽 感謝歌に 茨城大・飯島さん作詞 奈良の音楽祭で発表へ

障害のある人たちが作詞した歌を発表する「わたぼうし音楽祭」(奈良たんぽぽの会主催)が3日、奈良県で開かれる。50周年の今回、茨城大4年の飯島ありささん(24)=茨城県水戸市在住=作詞の作品「相帽(あいぼう)」が披露される。てんかんの疾患がある自身の頭を守る「保護帽」への思いを中心に、心の葛藤をつづった。飯島さんは「演奏を聴くのが楽しみ」と胸を躍らせている。
「♪いつ起きるか分からない どこで起きるか分からない 突然パタリと倒れてしまい 身体が硬直する発作 予測不能な私を 立派に守ってくれる保護帽さん」
飯島さんが書いた歌詞の出だしのフレーズだ。2年半ほど前から「若年ミオクロニーてんかん」の疾患を抱え、通院・治療を続けている。突然、意識をなくし倒れたり、両足が突っ張ったりすることがあるという。頭部を守るため、普段から緩衝材のある保護帽を着用している。
■制限乗り越え
着用は当初、大学の授業で「目立つ」という理由で抵抗を感じた。その気持ちを一変させたのが、昨年11~12月の中学校での教育実習。保護帽を着用して授業に臨んでも、生徒は気にする様子を見せなかった。帽子をかぶってよいのだと、心に余裕が生まれ「自信になった」。
今では保護帽は「おしゃれのアイテム」と、さまざまな形や色のものを利用。歌詞の最後のフレーズは「♪相帽さん いつも これからも ありがとう 大好きだよ」と結んだ。
飯島さんは「作品が採用されてうれしい」と顔をほころばせ、母の明子さん(53)は「(てんかんによる)生活制限がある中、乗り越えて、皆さんの前で発表するところまで来られた」と、たくましさを増した娘の姿に目を細めた。
■障害に理解を
同音楽祭は障害のある人たちに対する社会の理解と共感を深めようと、1976年に始まった。ボランティア団体、奈良たんぽぽの会が企画・運営する。
作品応募は作詞の部と作詞・作曲の部があり、飯島さんは作詞の部に申し込んだ。全国から342点が寄せられ、選考会を経て入選作8点に選ばれた。
その後、主催者が入選詩への曲を募集。飯島さんの歌詞に対し、6月中旬、岐阜県の女性が応募した曲の採用が決まった。本番はこの女性がピアノで弾き語りを披露する。
曲を聴いた飯島さんは「ゆったり穏やかなテンポ感。しっかりと歌詞を読み込んで作ってくれた」と感謝。奈良へは母と一緒に行き、女性との交流も楽しみにしている。