《いばらき戦後80年》「核兵器なき世界」訴え 国連でスピーチへ 高校生平和大使 中垣美咲さん(水戸一高)

茨城県立水戸一高2年の中垣美咲さん(16)が第28代高校生平和大使に選ばれ、戦争の悲惨さや平和の尊さを訴える活動に取り組んでいる。7日には長崎県長崎市を訪れ、集会や原爆の日の式典(9日)に参列。9月にはスイスの国連欧州本部で、「核兵器なき世界」を英語のスピーチで発信する。戦後80年の節目での大役に「平和な世界の実現に向け、全国の仲間と活動を共にしたい」と決意をにじませる。
中垣さんが平和への思いを強くしたのは中学2年の時。同県水戸市が募集した平和作文コンクールで優秀賞に選ばれ、市の中学生平和大使に任命されたことがきっかけだ。
作文は小学校低学年の頃に曽祖父が語ってくれた戦争体験談をまとめた。「当時はあまり意識することなく聞いていたが、大きくなるにつれて、言葉一つ一つの重みが心に響いてくるようになった」。成長とともに戦争と平和の意味を考えるようになった。
■広島での経験
「忘れられない」。中学生大使として訪れた広島県広島市での経験が、胸に刻まれている。被爆資料や遺品、廃虚と化した街の写真を見て衝撃を受けた。「人の命を奪う戦争はしてはいけない。教科書やニュースだけでは伝わらない重みを感じた」。現地の人たちとの交流で、平和への願いの深さの違いを痛感した。
広島での体験は平和活動への思いを強めた。「私にできることはないか」と考える中、高校生平和大使の存在を知った。「微力だけど無力じゃない」。そのスローガンに感銘を受け、迷わず応募した。
■知識集積に力
大使に選ばれ、責任の重さを日々、感じている。活動で最も大切にするのは「自分の口で、言葉で、直接訴えること」。広島の人の言葉からは「強さ」を感じたといい、言葉に出して伝える大切さを学んだ。
歴史資料や文献などを読み、知識の集積に努める。校内でも水戸空襲で校舎が焼失したことや敷地内に防空壕(ごう)が存在したことなど、教諭から身近な歴史を学んでいる。探究学習では平和教育の在り方をテーマに研究中という。
■責任全う覚悟
7日には長崎を訪れ、集会や原爆の日の式典(9日)に参列。8月末から9月にかけてスイスのジュネーブを訪問。国連の核軍縮会議に出席し、世界でただ一つの戦争被爆国として核兵器廃絶を訴える。大使全員がリレー方式で英語のスピーチを行い、全国の大使が集めた核廃絶を求める署名を提出する。
スピーチ案は現在、検討中。「核廃絶と平和の思いをしっかりと届けたい」と意気込み、「訴えに重みが出るので」と英語学習にも余念がない。
戦後80年の節目の年。戦争体験者が減っている中、「私たちの世代が受け継ぎ、また次の世代に引き継いでいくことが使命」。高校生平和大使としての役目と責任を全うする覚悟だ。
★高校生平和大使
1998年、長崎の高校生2人が地元の平和運動家らと共に、反核署名を携えて米ニューヨークの国連本部を訪ねたのが始まり。広島や長崎での研修のほか、核兵器廃絶を求める「1万人署名」を行い、国連に提出している。集めた署名は累計270万筆を超える。近年はノーベル平和賞候補にもなっている。28代目となる今回は18都道府県の高校から24人選出された。