《戦後80年》大洗見守る平和の女神像 長崎祈念像制作 北村西望の思い今も 茨城

長崎に原爆が投下されて9日で80年。爆心地の北にある平和公園に立つ巨大な「長崎平和祈念像」(青銅製、高さ9.7メートル)は、同県出身の彫刻家、北村西望(1884~1987年)の制作として知られるが、茨城県内にも北村が平和を願って手がけた作品を見ることができる。
そのうちの一つが、同県大洗町港中央の大洗港第4埠頭(ふとう)に立つ、高さ2.1メートルの女性像で、作品名は「平和の女神」。女性が両手を前後に大きく広げ、遠く空を見つめている。太平洋に向かって真っすぐに伸ばした左腕には、2羽の小鳥が身を寄せ合っている。北村が82歳の時に制作した。
同町によると、作品は1985年、北海道と大洗港の間のフェリー就航、鹿島臨海鉄道の開通、町制施行30周年を記念し、航行の安全を願って建てられた。北村が大洗の自然を愛し、同町神山町に別荘兼アトリエを設けていたことから、町が制作を依頼した。
「大洗歴史漫歩」(町商工観光課発行)によると、北村は完成に当たり「平和の女神が大洗の大気を満喫しながら、太平洋に向かって立つこの喜びは深く大きい」と述べたという。
当時、制作を交渉したのは、大洗美術館元代表の榎本英輔さん(故人)。息子の宇内さん(63)は「(平和の女神には)大洗を訪れる方を迎え入れる意味も込められている」と話した。
町内には同じ時期に制作された、小さな男児の像「今日わ」も同町桜道の同鉄道大洗駅前にある。