最低賃金改定 茨城県内、引き上げ幅焦点 負担感訴えの企業も

最低賃金(時給)の2025年度改定額の目安は、全国平均と茨城県を含む区分ともに63円アップとなった。現行方式となった02年度以降で最高の上昇額。今後は茨城地方最低賃金審議会が県内の最低賃金額の答申をまとめる。大井川和彦県知事が経済実態に見合った額まで引き上げるべきと主張する中、県内の一部企業から懸念や負担感を訴える声が上がっている。
7月7日の第1回茨城地方最低賃金審議会。大井川知事は「最低賃金引き上げに向けて審議されることを強く望む」と述べ、県民の社会生活を支え、人材を確保するため、経済実態に見合った額にすべきとした。
大井川知事は国の目安額に5~7年間で計35円上乗せし、30年ごろまでに経済実態を反映した相当額との差額35円を段階的に解消する方針を示してきた。目標の達成へ、企業を支援するとしている。
知事の意見を聞いた清山玲会長(茨城大教授)は「提出資料を踏まえて審議していく」と語った。早ければ今月中に改正最低賃金額について答申が取りまとめられる。
県央地域で複数のラーメン店を経営する男性は、最低賃金が急激に上がれば試用期間中の時給を見直す必要があるという。それに伴い、現行で賃金差がある他の従業員の賃上げも検討せざるを得なくなる。「ほとんどの経営者は賃金を上げてあげたいと思っているが、経営が成り立たなくなるのでは」と懸念を示す。
賃上げを価格に転嫁して単純に値上げすれば客離れにつながる恐れもあり、「恐怖心がある」。経営が苦しい中小零細企業にとって「つぶれるかどうかの振るいにかかる最終段階に入った」と見る。
県商工会連合会によると、県内の中小・小規模事業者は不安定な国際情勢の下で原材料や経営コストの高騰に見舞われているといい、人手不足の中、価格転嫁や最低賃金引き上げの対応に苦慮している。
同連合会は、利益確保が難しい中で急激な賃上げを行えば「企業体力の弱体化につながり、倒産・廃業の増加を招きかねない」と指摘。国や県には賃上げと経営安定化の両立に向けた効果的な支援策を求めている。
財務省水戸財務事務所によると、聞き取りした企業からは従業員確保のため賃上げに踏み切ったものの、人件費増で利益が削られている状況が見られたという。同事務所は「(最低賃金の引き上げが)負担になっているという声は聞こえている。企業経営が難しい局面に来ている」と説明した。