鷹見泉石の晩年描く映画初上映 茨城・古河で全編撮影、市も協力 9月13~19日、東京都内


江戸後期に古河藩の家老を務めた鷹見泉石(1785~1858年)の晩年を描く映画「SENSEKI(せんせき)」が9月13~19日、東京・新宿のケイズシネマで初めて上映される。製作総指揮を務めた茨城県の古河市観光協会の渡辺勉会長は「明治維新に向かう激動の時代に、古河から国の将来を見つめた人物がいたことを多くの人に知ってほしい」と話している。
鷹見家は古河藩主の土井家に仕え、泉石は、雪の結晶の研究で知られる土井利位(1789~1848年)の代に家老になった。利位に仕える傍ら、多くの蘭学者や文化人と交流し、西洋の文物や知識を蓄えた。
1846年に古河に隠居後も、当時の最新事情を反映した「新訳和蘭国全図」や意見書「愚意(ぐい)摘要(てきよう)」を執筆するなど活動は衰えず、ペリー来航で徳川政権が揺れた時にはいち早く開国を主張した。幕府の重臣、勝海舟や川路聖謨らも泉石の元を訪れ、時勢について意見を交わしたとされる。
渡辺さんは「泉石がいなかったら維新の形が変わっていたと言われることもある。渡辺崋山が描いた肖像画は国宝にもなっている。しかしその割に、市民でも詳しく知っている人は少ない」と話す。そんなことを高校時代の同級生で市出身の俳優、渡辺徹さん(故人)や針谷力市長らと話すうち、映画を作る構想が固まったという。
映画は、泉石が古河で過ごした晩年の約13年間を中心に描く。市も協力し、全編を市内で撮影した。食事のシーンではウナギや鮒(ふな)甘露煮といった市の郷土料理も登場する。レシピの提供や調理には地元の専門学校や飲食店、酒蔵なども協力した。
泉石役は、渡辺徹さんが所属した文学座のたかお鷹さんが務める。徹さんの妻の榊原郁恵さんや息子の渡辺拓弥さん、裕太さんも出演。芸能事務所のホリプロ(東京)も全面協力した。
今後は関東地方のミニシアターなどにも働きかけ、上映先を全国に広げていきたいという。
問い合わせは市観光協会(電)0280(23)1266。