ハーバード大「後輩心配」 米留学制限 茨城・日立一高出身、松野さん卒業

茨城県立日立一高から4年前に米国の有名私立大ハーバード大に現役合格した同県日立市出身の松野知紀さん(22)が同大を卒業し、帰国した。世界最高峰の学府で培った知見を持ち帰る一方、トランプ政権が留学生の受け入れを制限し始める事態に直面。大きな影響は受けず「幸運だった」というが、ビザ発給停滞なども目の当たりにして「後輩が心配」と不安も口にする。来春からは国内で就職予定といい、日本のエネルギー問題などに力を注ぐ。
松野さんは2021年9月に同大に入学。4年間学業に励み、今年5月に卒業して7月下旬帰国した。
大学では全寮制のため、世界各国からの寮生と学問や寝食を共にした。学業では授業のほかに宿題が多く、毎日午前0時まで課題をこなし、試験前は午前2~3時になることも。環境科学やエネルギー戦略を専攻し、日本のエネルギーの安定供給を自らのテーマに据えた。物価高に加え円安で生活費に苦労する中、奨学金などを得て乗り切った。
トランプ政権は、中東パレスチナ情勢を巡りイスラエルに抗議する学生デモを容認したと主張し、今年5月、同大の留学生を受け入れる資格の取り消しを決定した。大学は「自治の侵害だ」と反発し提訴。連邦地裁は取り消し措置を差し止めた。
松野さんは「半分いじめ状態。司法が(政権の措置を)止めてくれた。大学全体では、大変だけど皆で頑張ろうという雰囲気だった」という。自らはほぼ影響がなかったが、その後の学生ビザ審査の停滞や海外派遣の中断という事態に「日本の新規留学生が6人おり、(不利益は)かわいそう」と語る。「留学生には優秀な研究者がおり、(制限は)米の研究基盤が崩れるので利点がない。残念」と訴えた。
来春からは東京の外資系コンサルタント会社に就職し、日本の水素活用の戦略に関し貢献したい考えだ。留学を経て「海外に出て日本への関心や故郷への思いを強くした。地元でもできることがあれば、お手伝いしたい」と見据えた。