〝関東一涼しい街〟 北茨城市「涼しさ」PR 観測開始から猛暑日5日 移住促進や観光誘客図る

全国的に災害級の猛暑が続く中、茨城県北茨城市が「関東一涼しい街」「隠れた避暑地」として脚光を浴びている。オンライン記事をきっかけに評判が広がり、複数のテレビ局や旅行サイトが続々と紹介。思わぬ追い風が吹いた市は、観光客と移住者の増加につながる新たな起爆剤とみて、「涼」のPRに知恵を絞っていく。
▼関東1位
水戸地方気象台によると、同市で観測が始まった1978年から今年8月17日までの間、最高気温が35度以上を指す猛暑日を記録したのは5日のみ。同期間で比較すると、同県古河市は586日、同県鹿嶋市は74日と北茨城市の少なさが際立つ。また、古河市で40.6度を記録し、県内観測史上最高気温となった5日、北茨城市は最高32.4度と県内全14観測地点のうち最も低い数値となった。
注目され始めたのは、東洋経済新報社「都市データパック2023年版」を基に同社が同年にまとめた「関東地方の夏涼しい市区ランキング」がきっかけ。1991年から2020年の月の平均最高気温を低い順に並べており、北茨城市は27度で1位を飾った。2位の同県高萩市とは1.2度の差をつけた。
同気象台によると、涼しさの要因は海風と地形。海から冷たい風が入ることで気温の上昇が抑えられる。また、比較的に平たんな地形で、風が通り抜けやすいという。
▼新たな価値
一方、市の人口は1959年の約6万3000人をピークに減少。8月1日現在は約3万8000人となっている。こうした状況で、市は涼しさを新たな街の価値と捉え、地域活性化に役立てようと動き出す。
移住政策を担当する市企画政策課は「他の地域が暑さに苦しんでいる中、涼しさは売りになる」と強調。まずはその気候を体感してもらおうと、涼を楽しむイベントや夏季限定の短期間移住などの企画を視野に入れる。
市商工観光課も知恵を絞る。市観光協会の公式X(旧ツイッター)では7月23日から、正午現在の県内の気温を発信。「まだ知られていない」と市の涼しさをPRする。同課の担当者は市内屈指のひんやりスポット・花園渓谷などを挙げ「涼しい所で過ごしたいならぜひ来てほしい」と力を込める。