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ヒアリ飼育 弱点探る つくば・国環研 餌や防除薬剤実験 茨城

飼育されているヒアリの人工巣。逸出防止措置を施した3重の容器内で管理されている(国立環境研究所提供)
飼育されているヒアリの人工巣。逸出防止措置を施した3重の容器内で管理されている(国立環境研究所提供)
ヒアリ(国立環境研究所提供)
ヒアリ(国立環境研究所提供)


国内の港湾などで相次ぎ発見され、定着すれば生態系などに著しい影響を及ぼす恐れがある「要緊急対処特定外来生物」のヒアリ。その生態を把握して弱点を探し出そうと、国立環境研究所(茨城県つくば市)が国内初の飼育実験を進めている。国内の発見報告は本年度、7月末現在で18事例。過去最悪のペースで発見が続いていることから、実験で最適な薬剤を見つけ、水際対策に生かしたい考えだ。

ヒアリは体長2.5~6ミリで攻撃性が高く、刺されるとやけどのような激しい痛みや腫れが生じる。中南米原産ではあるものの、現在は米国や台湾、中国など環太平洋諸国に分布が拡大している。

環境研は台湾から1万匹のヒアリを導入し、今年3月から逸出防止措置を厳重に施した飼育ケースに入れて生態の研究に着手した。日本に侵入した場合、どんな餌を好むのか、どんな化学物質が苦手かなど、防除対策に活用できる生態を調べている。

主任研究員の坂本洋典さんは「港湾でヒアリが好む餌を明らかにすることで、早期発見が可能になる」と指摘。国内の港湾でヒアリの防除活動や調査を実施する際はスナック菓子でヒアリを誘引することもあるという。

国内ではヒアリを2017年に初確認。主に東京、横浜、名古屋、大阪、神戸などの港湾で陸揚げされたコンテナなどから発見され、本年度は7都府県で報告事例が挙がっている。今年6月には、幼虫やさなぎを含むヒアリ500匹余りが入ったコンテナが茨城県牛久市の民間会社車庫を経由し、千葉県柏市で開封時に発見された事例もあった。

ヒアリが確認された国内のコンテナは中国・広州を経由して届いたものが多数を占めており、特命研究員の五箇公一さんは「かつて海が隔てていたものが、今や海がつなげてしまっている」とヒアリ侵入に警鐘を鳴らす。

侵入防止は行政の取り組みだけでは限界もあり、坂本さんは「われわれの日常を輸入物品が支える限り、外来生物への備えは継続的に必要になる」として、輸入や物流業者に積極的な対策を呼びかけている。

■20年常総、茨城県1例 事業者に確認呼びかけ

茨城県では、常総市内の事業者敷地内で2020年4月に搬入されたコンテナから、働きアリとみられるヒアリ約10匹が確認された1例が報告されている。

県生物多様性センターによると、中国・福建省から東京港に輸送後、陸路で同市へ運ばれたもので、確認された個体は全て殺処分され、周辺でも疑わしい個体は見つかっていない。

同センターは「攻撃性が高く、入られたら本当に危険」とし、港湾・物流事業者に対し注意深く確認するよう呼びかけている。



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