《みと・まち・情報館便り》射爆場の記憶 水彩画に 栗田さん展 戦後爪痕と自然対比 23日、トークイベント 茨城・水戸

茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園周辺が、米軍の「水戸射爆場」として使用されていた頃を記録した栗田健史さん(57)=同市=の水彩画展「『禁断の海辺』に吹く風~束の間の楽園」が29日まで、同県水戸市南町2丁目の茨城新聞みと・まち・情報館(水戸証券ビル1階)で開かれている。出展した25点の多くは、戦後の爪痕と、対照的に人の出入りが制限されたことで守られた希少な野鳥や花、小動物が一つの作品に〝同居〟。平和と明るい未来への願いが込められている。
栗田さんは、公立学校の美術教師。
水戸射爆場は旧陸軍の水戸飛行場跡地で戦後、米軍に接収された。1973年、日本に返還された後、公園などの開発が本格始動するまでの約10年間、人の出入りが厳しく制限されていた。栗田さんはその頃、思春期を過ごした。
今展では、中学1年の際、同級生らと、鳥や動物の公的な調査団に加わって射爆場跡に出入りするようになってから、その後も野鳥観察に明け暮れた友との青春時代の思い出、心の風景を描いている。
「トーチカ(または砲台)跡」は、戦時中、旧日本陸軍が造った、敵を迎え撃つための施設を題材にした。トーチカは基礎部分がむき出しとなって、今もひたち海浜公園の未開園区に残っている。作品にはその先に凜(りん)と立つ1羽の美しいイソヒヨドリを、平和の象徴として登場させた。
「Bоmb Dоdgers Club」は、米軍が兵士のために建てた酒場跡の景色を回想した作品。日本返還後、廃虚と化した建物には、ハシブトガラスが飛来するようになっていた。
水彩画のほか、栗田さんが小学6年生からつけている野鳥観察ノートや、射爆場の歴史を知るきっかけとなった箕川恒男さんの著書「禁断の海辺~国策に翻弄(ほんろう)された半世紀の記録」なども展示紹介。
観覧は平日午前10時~午後5時。入場無料。23日は特別開館し、午後1時半から栗田さんが絵の背景などを語るトークイベントなどを予定する。問い合わせはみと・まち・情報館(電)029(306)9500。