TX開業20年 つくば駅周辺 刷新へ 公園改修、技術革新拠点も 茨城



つくばエクスプレス(TX)の始発駅、つくば駅周辺(茨城県つくば市吾妻)で、新たな街の活性化策が計画されている。大型商業店舗の撤退などで一時期、中心市街地の衰退が懸念されたが、駅前公園の改修や研究学園都市らしいイノベーション拠点の整備が予定されている。
つくば駅から北東約400メートルの場所では筑波大が2027年度の完成を目指し、企業と共同研究を行う施設を設ける計画だ。約3.3ヘクタールの職員宿舎跡地に、長さ100メートル、幅70メートル、高さ22メートルの大空間実験棟を建設。ドローンや自走ロボットの研究に取り組む。
同大によると、現在のところ20社程度の企業が参加を検討。担当者は「市民も利用できるオープンスペースを設ける予定で、大学の研究を身近に感じてもらいたい」と話す。
つくば駅周辺は以前「空洞化」が懸念された時期がある。老朽化した国家公務員宿舎の削減が05年に始まったことに加え、17年に駅前の百貨店「西武筑波店」が閉店。翌18年には商業施設の核テナント「イオンつくば駅前店」が撤退したためだ。
市が駅周辺の再生議論を開始したのは17年だ。「つくば中心市街地まちづくり戦略」を20年に策定し、これまでに約10億円を投入。老朽化したつくばセンタービルの改修や、まちづくり会社の設立など、てこ入れを図ってきた。
市が現在計画するのは、つくば駅前にある中央公園の改修と、財務省と一体で進める「吾妻二丁目国家公務員宿舎跡地」の開発だ。
中央公園は池のそばにデッキを新設。休憩のためのベンチも並べる。27年度に工事に着手する予定で、「TXでつくばを訪れた人たちの写真スポットになればいい」と市担当者は語る。
国家公務員宿舎跡地は市有地を含めて約5.7ヘクタールの大区画だ。駅から西約300メートルほどの場所にあり、一部のエリアを市はイノベーションを生み出す拠点に位置付ける。財務省が企画提案型の入札を来年5月に実施する予定だ。
つくば駅周辺でイベント支援などに取り組むつくばセンター地区活性化協議会の飯野哲雄会長は「つくば駅周辺は市の玄関口にふさわしい街づくりを行うことが重要。科学技術都市、文教都市という他の駅にはない強みを打ち出していくことが求められる」と話す。
■開業日つくば駅勤務 益田さん「構内 お祭り状態」
20年前の8月24日。つくばエクスプレス(TX)つくば駅は初乗りを楽しもうとする乗客でごった返した。同駅に勤務していた首都圏新都市鉄道(東京)旅客課の益田貴仁さん(38)は「お客さんもわれわれも初めてのこと。駅構内はまさにお祭り状態だった」と当時の様子を振り返る。
益田さんは開業した2005年春に入社。西武鉄道(埼玉)で研修した後、つくば駅務管理所へ配属された。
開業当日。つくば駅では午前4時にセレモニーが行われ、乗客を含む約1000人以上が参加。同5時7分に一番列車が出発した。
益田さんは券売機に並ぶ乗客に対応。切符の買い方を知らない人がいたため、何度も繰り返し説明し、ホームで行き先案内も行うなど、業務に奮闘した。
下り列車が到着すると、プリペイドカードの金額不足で窓口精算に並ぶ人が続出。行列は地上の出入り口付近まであふれ、午後に入ってから一時入場制限を設けたほどだった。
「あそこまでの混雑は東日本大震災の時を除いてあまり経験がない」と益田さん。現在は駅業務の研修などを行う部署に所属し、社員の一人としてTXを支えている。