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本棚一画に「推し」ずらり シェア型書店増、茨城・守谷にも

シェア型書店「メクリバ meBOOKS」の管理人を務める安樂井みあさん(右)と、棚主の石川珠美さん=守谷市百合ケ丘
シェア型書店「メクリバ meBOOKS」の管理人を務める安樂井みあさん(右)と、棚主の石川珠美さん=守谷市百合ケ丘


「シェア型」と呼ばれる新しい形の書店が各地で誕生している。個人(棚主)が本棚の区画を借りて好きな本を販売できる仕組みで、店内には棚主が選んだ個性あふれる本が並ぶほか、棚主自身が好きな催しを開くこともできる。新刊を取り扱う書店の減少が続く中、シェア型書店が広がる背景を探った。

茨城県守谷市のつくばエクスプレス(TX)守谷駅に近い住宅街の一角で5月にオープンしたシェア型書店「メクリバme(め)BOOKS」。店内には、30センチ四方の棚が120区画ある。それぞれの棚にはビールや椅子、宝石など、棚主の「推し本」がずらりと並ぶ。管理人の守谷市、安樂井(あらい)みあさん(57)は「それぞれの棚でカラーが違うのが魅力」と話す。安樂井さん自身も都内のシェア型書店の棚主だ。

同店では棚主が店番を務めることがあり、その際は棚主がワークショップや講座を開くこともできる。

棚主の一人で千葉県我孫子市、石川珠美さん(53)は、童話作家の故・安房直子さんの大ファン。自身の本棚「ネムリ堂」では、安房さんの著書に加え自身が中心となって編集した同人誌なども販売し、「生きづらさを感じている人に読んでほしい」と呼びかける。店番を務める9月には、安房さんの魅力を伝えるイベントを企画中だ。

■つながり求めて

シェア型書店の動向を調査する「本のある場所研究会」によると、常設のシェア型書店は2010年代後半に登場し、店舗数は全国で126店舗(6日現在)に上る。

同研究会の鈴木悠平代表は、増加の背景を「本を通して人とつながったり、自己表現したりする場を求めようとするニーズがある」と指摘。個人で書店を経営するのはハードルが高くても、棚主なら月数千円、高くても1万円前後で「小さな本屋」になれるとし、「地域の本屋を支える一端を担えるという意識の人も多いだろう」とも語った。

近年はシェアハウスや民泊、スポットワークなどシェアリングエコノミー(共有型経済)も活発化しており、シェア型書店の増加は「テクノロジーの発展や交流サイト(SNS)の普及で、(出店が)容易になった側面がある」と推測する。

■継続して工夫を

一方、新刊書店は減少が続く。日本出版インフラセンターの調査によると、全国の店舗数は1万290店(6月18日現在)で、この10年間で4000店以上が閉店を余儀なくされた。茨城県でも296店から220店に減少した。

専修大学の植村八潮教授(出版学)は、新刊書店の減少の理由の一つを「雑誌を基軸とした出版構造の崩壊」と指摘。ただ、「読者人口は減っていないだけでなく、本の愛好家、本屋好きは変わっていない」として、読書離れについては否定的な見方を示す。

シェア型書店については「棚主が黒字となっているケースは、私の知る限りでほとんどない」としながらも、今後も存続していくためには「継続的に人を集める工夫が必要」と述べた。



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