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《広角レンズ》町内会主体の防災計画増 茨城県内7市町反映、実践的

防災計画づくりに向けて地区内を調査する住民や大学生ら=7月、つくば市北条
防災計画づくりに向けて地区内を調査する住民や大学生ら=7月、つくば市北条


町内会など地域住民が主体となり災害時の対応を決めておく「地区防災計画」を、自治体単位でつくる地域防災計画に反映する例が増えている。2025年版防災白書によると、昨年4月時点で、茨城県内では水戸やつくばなど7市町が反映。地理的特性や自治体主導など地区計画策定の背景は地域ごとに異なるが、住民と行政をつなぎ、地域防災力を強化する一助になっている。

■100地区超

同白書などによると、県内で地域計画に反映しているのは水戸、つくばのほか、龍ケ崎、常総、守谷、坂東、阿見の計7市町(昨年4月時点)。小学校区や自治会など100を超える地区で計画を策定済みだ。

全国では茨城県を含む43都道府県の244自治体が地区計画を地域計画に反映。地区数は2727地区で前年に比べ298増えた。内閣府によると、策定中を含めると計1万地区に上る。実践的な計画づくりが広がるよう、積極的に取り組む地区の事例を広めることが重要だと指摘する。

■ボトムアップ

つくば市では19年、土砂災害警戒区域に指定されている筑波山麓地区の計画を地域計画に反映した。

筑波山中腹に位置し、民家周辺に旅館や土産物店などが並ぶ同地区は、高齢化で山道避難が難しいなどの課題を抱える。このため、自治会の要請に応じて緊急時に旅館に避難できるよう協定を締結し、地区計画に盛り込んだ。

一方、市の地域計画には、同地区住民による防災行政無線の活用について明記。市危機管理課は「(住民も)行政と一緒に安全を守る意識が大事」と話す。

このほか、国登録有形文化財の建物4件を有する北条地区は住民やNPOが主体となり、ボトムアップ式の防災計画づくりが進む。

坂東市では、地震被害に特化した地区計画を策定。対象の岩井第2地区は住宅が建ち並び、狭い道なども多く、火災や建物倒壊など都市型被害を想定した災害対応シナリオをまとめた。

市は今後、同地区をモデルケースに他の地区でも策定を進める考え。市交通防災課は「地区計画の普及啓発に努めたい」とする。

■市が働きかけ

水戸市は全34小学校区で地区計画を策定済み。東日本大震災の教訓もあり「防災格差を生まないための後押しが必要」(市防災・危機管理課)とし、市が働きかけ作成を進めた。同課は「いざという時、行政による公助だけでは限界がある。自助・共助の自発的な活動が力になる」と話す。

阿見町は、町職員や防災士が助言し、自治会単位での計画づくりを支える。16年に土砂災害警戒区域内の地区から始め、今年4月時点で、全67地区のうち45地区が計画を策定し、地域計画に定めた。

常総市は15年の関東・東北豪雨(常総水害)を契機に「住民の防災意識がより高まった」(市防災危機管理課)。自主防災組織の設置とともに地区計画の策定作業が進む。「(防災は)住民と行政の連携が欠かせない」(同課)とし、策定支援や啓発に力を入れる。

龍ケ崎市や守谷市でも市がサポートしながら、計画を策定する地区を拡大していく考えだ。

一方、課題は「計画をつくった後の危機意識の継続性」(阿見町防災危機管理課)。計画内容はもちろん、地区住民らが話し合いを重ねる作業過程も重要だ。同課は「つくって終わりではなく、継続的な訓練や定期的な見直しが求められる」と強調する。

地区計画の制度創設から10年以上が経過。同白書は地域の防災力向上へ「さらに浸透していくことが期待される」としている。

★地区防災計画制度

町内会や自主防災組織の住民のほか、事業所、福祉関係者らが地域の災害リスクや平時・災害時の行動などを定め、地域防災計画への反映を自治体側に提案する仕組み。災害対策基本法改正により、2014年に運用が始まった。市町村と住民らの連携を深め、災害対応を強化する狙いがある。



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