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《いばらき戦後80年》戦没者慰霊碑、老朽化進む 実態調査や修繕費補助 維持管理、官民で模索

亀裂の跡が残った忠魂碑を見上げる八千代町遺族連合会の斎藤悦雄会長=同町佐野
亀裂の跡が残った忠魂碑を見上げる八千代町遺族連合会の斎藤悦雄会長=同町佐野


戦後80年がたち、茨城県内各地にある戦没者慰霊碑の老朽化が目立ってきている。遺族の高齢化により維持管理が困難になっている例もある。本年度、厚生労働省は実態を把握する調査と、修繕費などの補助拡充に取り組んでいる。戦禍の記憶を伝える身近な遺跡をどう管理するか、官民連携で模索が進む。

■高齢化

八千代町佐野にある忠魂碑。裏には太平洋戦争などの戦没者174人の名前が刻まれている。縦一直線に走る亀裂は一度倒れて真っ二つに割れたのを修繕したためだ。鉄板とボルトで補強していた時期もあった。

接ぎ目の傷みが目立ってきたため、町は昨年度、厚労省から補助を受けて修繕した。管理する町遺族連合会の斎藤悦雄会長(82)は「昔はみんなで草刈りしたが、その習慣が薄れてきている。高齢になり、外に出るのも大変な人も多い」と忠魂碑を見上げながら話した。

日本遺族会の平均年齢は85歳。県遺族連合会も高齢化が進み、会員は約10年前からおよそ3割減少した。県内の慰霊碑の多くは遺族が草刈りや清掃を担っているが、年々作業が困難になってきている。

■管理者不明

在郷軍人会など既に解散した組織が管理者となっている慰霊碑も多い。石岡市には管理者不明となり、東日本大震災で倒壊したままの碑もある。同市の担当者は「こちらで手をつけていいのか分からない」とこぼす。

厚労省は2018~19年にも民間建立の慰霊碑の調査を行った。当時の調査によると、茨城県には364基の慰霊碑があり、このうち倒壊、もしくはその危険性がある「不良」は9基、損傷が見られる「やや不良」は20基あった。

本年度、厚労省は改めて調査を実施するとともに、管理不全となった慰霊碑への補助を拡充する。自治体が危険な碑を移設撤去したり、壊れた碑を補修したりする場合、100万円を上限として補助する。同省の担当者は「今後は新たな調査結果を踏まえ、地方自治体と連携しながら適切な維持管理を検討したい」と話した。

■記憶をつなぐ

茨城大で授業を行い、県内の慰霊碑を調査した経験がある東洋大文学部の佐々木啓教授(46)(日本近現代史)は、戦没者慰霊碑について「若い世代にとって、戦争とは何だったのかが実体験できる大事な場所」と話す。学校や神社など身近な場所にあり、小中学校の平和学習で活用されることも多いという。「地域の記憶をつなぐ大事な役割を果たしてきた」と重要性を語った。

茨城大の学生と実施した県内の調査では、文献に記録が残っていても現地では姿を消した碑や、管理が行き届いていない碑が散見された。「管理そのものが難しい時代を迎えている。自治体がある程度力を割くのが重要」と話した。



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