野村花火工業(茨城・水戸) 前人未踏の10度目日本一 秋田・大曲の全国大会 代名詞「ブルー」彩る


秋田県大仙市で8月30日に開かれた第97回全国花火競技大会「大曲の花火」で、野村花火工業(茨城県水戸市)が2年ぶりに最優秀賞の内閣総理大臣賞を受賞した。3部門ある「夜花火の部」のうち2部門を制し、前人未到の10度目の頂点に輝いた。野村陽一社長(74)は「チームが一つになり、全員の力でつかんだ日本一。本当にうれしい」と喜びをかみしめた。
大曲の花火には全国の花火業者を代表する28社が出場。夜花火の競技で野村花火工業は、いずれも10号玉による伝統的な菊形の花火「芯入割物」と新しい発想の花火「自由玉」の2部門で優勝し、音楽に合わせて自由に表現する「創造花火」で優秀賞を獲得。各部門の総合評価で、前回覇者の地元・小松煙火工業(秋田県)を接戦で破り、最優秀賞を手にした。
大曲の花火では、2004年に内閣総理大臣賞を初受賞し、16、17年には連覇を果たすなど今年で10回目の受賞となった。全国初となる快挙に、野村社長は「歴史ある最高峰の大会で評価されるのは光栄なこと」と胸を張る。同賞が授与されるもう一つの花火競技大会「土浦全国花火競技大会」でも、これまでに計12回受賞している。
今回優勝を飾った芯入割物の部では、野村社長が生み出した大輪が6重になる最高難度の「五重芯」を披露。野村社長は「花火に確信はない。開く瞬間までどうなるか分からない」と気をもんだが、完成度の高い美しい光の輪が多くの観客を魅了した。
同じく優勝した自由玉の部では「美しきサンゴの海」と題した発想豊かな一発を打ち上げた。野村花火の代名詞ともいえる風情漂う落ち着いたブルーが大きく広がる輪の中に、色鮮やかな光がきらめく繊細な作品が夜空を彩った。
花火師には技術力はもちろん、演出力や構成力など総合的な力が試されるといい、野村社長は「心を込めてチーム一丸で作り上げた傑作。磨き上げた技術が認められた証し」と話す。
次の目標は11月1日に予定されている土浦全国花火競技大会。準備は着々と進んでおり、野村社長は「地元の茨城でも、いいものを見せたい。夢と感動を与えたい」と意欲を語る。
卓越した技術で金字塔を打ち立てたが、「まだまだ満足していない。もっと高みを目指したい」と野村社長。日本の花火技術の向上に取り組み、「切磋琢磨(せっさたくま)しながら花火業界をもっと盛り上げたい」と力を込めた。