《広角レンズ》放課後や早朝 広がる居場所 子育て世代支援 自治体、無条件で預かり 茨城

放課後や始業前の子どもの居場所づくりが多様化している。親の就労状況を問わない無条件での預かりや早朝の学校開放など、茨城県内の自治体で取り組みが広がりつつある。子どもたちが安心して過ごせる環境を確保するとともに、仕事と育児の両立や子育て世代の生活の多様化を支援する狙いもある。
■多様な体験
夏休み中の8月中旬、同県つくば市沼崎の市立沼崎小に子どもたちの笑い声が響いた。教室では読書やプログラミング、体育館ではボール遊びと、思い思いに過ごす児童たちの姿があった。
子どもの多様な居場所づくりに向け、市は本年度、同校をモデル校に指定し、学校施設を活用したアフタースクール事業を始めた。保護者の就労の有無に関係なく希望する全ての児童が利用できるのが特徴だ。平日午後5時、休日は同3時まで利用可能で、児童クラブの子どもたちと一緒に過ごすことができる。
4月から小学2年の長男を預ける主婦(43)は「子どもが小1の時、学校が終わった後も学童で友達が遊んでいるのがいいなと言っていたので、利用を始めた」と、週2~3回ほど利用している。同じく小学2年の長男を預ける別の主婦(38)は「学区が広く、車がないと友達のところに行けない。利用前は子ども同士で遊ぶ機会も少なく家にいたが、今は学校で安全に遊べて良い」と利点を話す。
同事業は演奏会や障害者スポーツ体験会などのイベントも実施。市こども育成課は「家で1人ではできない体験を提供する機会にしたい」とし、子どもの多様な体験を促す。
■安心して
水戸市は放課後の児童生徒の居場所を確保するため、市民センターの一部を「こどもスペース」として開放している。
2021年度から22年度にかけて市内7カ所で開設、建物改修中の2センターを除き本年度、全32センターに拡充した。小中学生を対象として、主に平日午後3~5時に利用できる。子どもたちに図書室やロビーを活用し、読書や勉強など自由に過ごしてもらう。登録や条件などはなく、「子どもたちだけで気軽に使える」(市こども政策課)のが特徴だ。
市が昨年度行ったアンケート調査では、小中学生から「家の近くに友達と勉強できるところがほしい」「放課後に集まれる場所を」など、居場所や遊び場の充実を求める声が多く寄せられた。保護者からも「安全な環境で子どもだけで遊べる場所がほしい」などの要望があった。
同課は「子どもたちが安心して過ごせる居場所を提供したい」としている。
■小1の壁
子どもが小学校に入学したことで朝、家を出る時間が遅くなり、保護者の働き方に影響を与える「小1の壁」。子どもたちの「朝の居場所づくり」に向け、登校時間よりも早く学校で受け入れる取り組みも始まっている。
笠間市は県内で他市町村に先駆け、市立大原小で児童の「早朝見守り」に乗り出した。通常より45分早い午前7時に学校を開放し、会議室などで読書や勉強で過ごしてもらう。
昨年度実施の同校の調査で「早朝見守り」の希望があったため、モデル事業としてスタート。利用登録数は当初から横ばいが続くが、市教委は「周知が進めば利用増が見込まれる。保護者にも優しい学校づくりを目指したい」と話す。
水戸市でも学校で児童の受け入れ時間を早める実証実験を始めた。7~8月に市立常磐小で通常より45分早く体育館を開放。市こども政策課によると、夏休み期間中は延べ100人弱が利用したという。
市は今後、別の小学校で条件を変えて実証実験を行う方針で、同課は「保護者ニーズや費用対効果を検証した上で、支援の在り方を検討したい」としている。