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《2025茨城県知事選》10代の投票機会拡充 主権者教育 中立性配慮、学校で温度差

臨時期日前投票所で知事選の投票をする県立多賀高の生徒=日立市鮎川町
臨時期日前投票所で知事選の投票をする県立多賀高の生徒=日立市鮎川町


若者の投票率が伸び悩む中、茨城県内の学校関係者や選挙管理委員会が知恵を絞っている。知事選では高校25校に期日前投票所を設け、投票機会を拡充。学校現場では授業や選管による出前講座を開くなど取り組みが進む。ただ政治的中立性に配慮し主権者教育をためらう学校もあり、温度差が生じている。専門家は教員の負担軽減や中立性確保の点から「高校と大学が連携していくのも手だ」と指摘する。

「自分の票で政治を変えられると思い、投票した」「大人になったと自覚できた」

3日午後、日立市の県立多賀高に知事選の臨時期日前投票所が設けられ、18歳の3年生8人が投票。渡辺光希さんと根本剣太朗さんは、自身の1票を巡る思いを語った。

同市は県内最多の10高校に臨時期日前投票所を設置。市選管担当者は、先輩や同級生が投票する姿を見て「自分もやろうと思ってくれたら」と政治参加の機運醸成に期待する。同校も「生徒の(選挙への)意識が変わるのではないか」と見ている。

■意見を整理

選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公選法施行から、来年6月で10年。県内の18歳投票率は、改正後初の2016年参院選の50.10%(抽出投票区)をピークに、近年の国政選挙は30~40%台と伸び悩む。知事選は17年に36.14%、続く21年は35.74%と微減した。

こうした状況を踏まえ、大切な1票を行使してほしいと、各方面で主権者教育に力を入れている。

文科省の主権者教育実践校に指定された多賀高は今夏の参院選前、報道機関が提供する「ボートマッチ」といわれる仕組みを授業に取り入れた。選挙の争点から自分の考えを選び、考えの近い候補者を探す。上岡龍平教諭は「争点や生徒の意見を整理する機会となった」と話す。

同じく指定校の県立古河三高は本年度から3カ年で、大学教員や法律専門家ら外部講師を招いた授業を行っていく。県選管は高校を対象に出前授業を展開。市町村選管では小中学校に出前授業や模擬投票を提供し、主権者意識を醸成している。

■大学と連携

取り組みが進む一方、温度差も目立ち始めた。公私立高の教員らでつくる県高校教育研究会の公民部長で、古河三高の早川尚人校長は主権者教育に「踏み込まない教員も増えてきたと感じる」と懸念する。

理由として、多忙や、特定の政党や候補者に偏らない「政治的中立性」に授業でどう対応するかという配慮があるとみる。それでも早川校長は、「子どもたちに政治を見る物差しを持ってほしい」と主権者教育の必要性を強調。部会で良い教員の取り組みを共有していきたいとする。

常磐大の砂金祐年教授(行政学)は、課題解決のため「(ノウハウを持つ)大学やNPOなど外部との連携が必要」と訴える。

砂金教授は、大学生が実際の選挙の公約を参考に架空の政党の公約をつくり、高校生が模擬投票する形の授業を行っている。高校教員の負担の軽減や中立性の担保に有効という。

人工知能(AI)や交流サイト(SNS)が登場して状況は変わったとも語り、「メンテナンスして次の世代に渡さないと劣化していってしまう」と主権者教育を更新していくことの重要性も指摘した。



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