J1鹿島 若鹿、飛躍遂げる アカデミー強化結実 ユース初V、代表選出も

若鹿たちが飛躍を遂げている。長きにわたって下部組織の「アントラーズアカデミー」の強化に努めてきたサッカー・J1鹿島アントラーズ。18歳以下で構成されるユースが日本一に輝いたり、世代別の日本代表も数多く選出されたりするなど、続けてきた強化策が実を結んでいる。いかにしてアントラーズアカデミーがJリーグ屈指の育成機関に成長を遂げたのか。経緯や理由を探った。
■海外移籍増
鹿島は2000年代から下部組織の強化に努め、10年代に入ってさらに注力。要因はトップチームで活躍する主力選手の海外移籍の増加だ。1996年から2021年まで鹿島の強化責任者を務めた鈴木満フットボールアドバイザー(68)は「海外に行きやすくなったことで平均在籍年数が短くなり、戦力を保つためには選手の供給源がより必要になった」と回顧する。
戦力維持の難化に対応すべく、クラブは創立20周年の11年に、30年後を見据えた「KA41」という経営ビジョンを策定。選手育成に関し、トップチーム主力のうち5、6人が下部組織出身者であることを目標とした。
17年までにアカデミーの県内拠点を鹿嶋、つくば、日立と三つに広げたほか、OBの小笠原満男(現ユースコーチ)や柳沢敦(現トップチームコーチ)両氏ら鹿島の哲学を知り尽くした指導者を次々と投入。指導体制をどんどん充実させた。
■技術鍛える
「技術を鍛えることにフォーカスした」と強調したのは、アカデミーの責任者を務める鈴木修人アカデミーマネジャー(40)。19年、鹿嶋市内に下部組織の選手寮「アカデミーハウス」が新設されたことでハード面が飛躍的に改善した一方で、鈴木マネジャーは「選手の技術が全然足りないと感じていた」と当時を振り返る。
クラブが伝統的に大切にしているハードワークや球際の激しさといったプレー強度だけでなく、「技術があるから鹿島は強い」と鈴木マネジャー。次々とタイトルを獲得してきたトップチームの強さの要因を、小学世代のジュニア部門からたたき込むことに注力した。成果は着実に表れ、近年は佐藤海宏や徳田誉らジュニア部門から育った選手が順調にトップチームへ昇格。各世代の日本代表にはアカデミーの選手たちが多く名を連ねる。
■指導法更新
ただ、鈴木マネジャーは「ここからだと思う」と強調する。実際に現在のトップチームで絶対的な主力として活躍しているのは鈴木優磨のみ。「5、6年後を見据えて、主力の半分は下部組織出身というような状況を目指したい」と今後のもくろみを語る。
また、選手の海外移籍による移籍金がクラブ運営の重要な収入源となっている現状から、「海外でプレーできる選手を育てる」こともこれからの大きな課題だ。「プロとして必要なことの全てを、アカデミーでたたき込むということにフォーカスして指導に当たっていきたい」と鈴木マネジャー。若鹿たちをさらなる飛躍に導くべく、指導法をアップデートしていく考えを示した。
★アントラーズアカデミー
サッカー・J1鹿島アントラーズの下部組織。鹿島、ノルテ(日立)、つくばの三つが拠点。ユース、ジュニアユース、ジュニアのほか、主に小学生が対象のスクールは茨城と千葉に計21校ある。
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