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水戸路上襲撃 夢中で応戦 傷悔いなし 容疑者取り押さえた男性 茨城

右腕の傷に触れながら、事件当時の状況について話す被害者の男性=水戸市内
右腕の傷に触れながら、事件当時の状況について話す被害者の男性=水戸市内


茨城県水戸市の中心市街地の路上で男女6人が刃物で切り付けられるなどして負傷した事件で、容疑者の男(48)を取り押さえた県警OBの60代男性が茨城新聞の取材に応じた。男性の右腕には男に抵抗されてできた傷が残る。男性は「怖さより、行かなくてはならないの一心だった。傷はまだ痛むが、悔いはない」と言い切った。

■手を離さず

事件当日の7月28日午後6時過ぎ。仕事を終え、国道50号の歩道を徒歩で帰宅中だった男性は、反対側の歩道で光る何かが視界に入った。

最初は「おもちゃか」と思ったが、すぐに刃物で人が襲われていると分かった。「行かなくては」ととっさに体が動き、走る車を避けながら国道を横断。駆け付けた現場には、両手に刃物を持った男がいた。

男性が持っていたのはショルダーバッグだけ。両手で刃物を振り回すなどしてきた男にバッグで応戦したが「無我夢中でよく覚えていない」。柔道経験者の男性が男を組み倒して刃物を取り上げようとしたのに対し、男は足をばたつかせ、かたくなに手を離さなかった。

「体感で1、2分」の緊迫した時間。男は終始無言だった。男性の右手は次第に力が入らなくなり、手首から血が出ていることにようやく気付いた。その後、ほかの襲われた男性や周囲にいた人に、男を取り押さえるよう呼びかけた。

■完治しないかも

県警OBの男性は取材中、利き手の右の指先を左手で押さえ、痛みに耐えていた。手首の傷は骨や神経まで達し、手のひらは冷たく感覚がない。就寝時に痛みで目が覚めることもあるという。

箸やボールペンは握れず、孫とのボール遊びもできなくなった。手術後、医師からは「完治しないかもしれない」と言われた。それでもめげることなくリハビリに専念し、左手を使う練習もしている。

男性は6人いるうちの最後の被害者。男性が男を止めていなければ、被害はさらに大きくなっていた可能性がある。「逃げた方がよかったのかもしれないが、見ているだけでは後悔したと思う」

事件当時の状況は度々頭に浮かび、刺されそうになった時の恐怖感を思い出すこともあるという。痛みをこらえるように傷を見つめ、「きちんと説明し、罪を償ってほしい」と訴えた。



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