マダニ感染症、検出20分 茨城・つくばの企業がペット用キット開発 1週間から大幅短縮

茨城県を含め国内で報告が相次いでいるマダニ媒介の人獣共通のウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を巡り、ペットの感染の有無を短時間で調べられるPCR検査キットを、光通信用部品メーカーのゴーフォトン(同県つくば市、西沢尚文社長)が開発した。最大で1週間程度かかっていた検査期間を約20分まで短縮でき、同社はペットの早期治療や人の感染予防につながることを期待する。
SFTSはウイルスを保有するマダニにかまれるなどして感染。三重県で5月、感染したネコを治療した獣医師がSFTSで死亡した事例では、ネコからの感染が疑われた。
致死率は人で10~30%とされ、ネコは約60%、犬は約40%とも言われる。これまでに県内では、70代の男性2人のほか、ペットのネコと犬計3匹の感染が確認されている。
同社によると、ペットの感染のPCR検査は、検体を検査センターに輸送するため最大で1週間程度かかっていた。期間を短縮できれば、早期治療や人の感染予防につながり、開発担当の三谷康正さん(54)は「迅速に検査できる手法を探っていた」と語る。
開発した検査キットは、SFTSを検出する実験用試薬とスマートフォンのような形のPCR装置の組み合わせ。血液を試薬と混ぜて測定用チップに注入し、装置にセットして約20分で感染の有無が分かる仕組みだ。特定のDNAを増幅させ、そこから発せられる蛍光信号を検出する同社の特許技術を取り入れた。装置は約560グラムと軽く「とにかく簡単に使えて、その日のうちに結果が分かる」(三谷さん)。
同社は約2年前から、宮崎大の岡林環樹教授(獣医学)と実験用試薬の共同研究を開始。つくば市内や大分県内の動物病院の協力を得て、感染の疑いがあるネコや犬を検査キットで調べ、データを集めた。宮崎県内で8月、日本獣医学会の学術集会が開かれ、岡林教授が研究成果を報告した。
既に装置は商品化しており、本年度中に試薬の販売も目指す。いずれも医療機関向けで、特に動物病院の需要を掘り起こし、医療従事者の感染予防を図りたい考えだ。三谷さんは「治療が手遅れになるのを防ぐため、全国の動物病院で取り入れ、迅速に検査してほしい」と話した。