上曽トンネル開通 悲願達成、喜びに沸く 関係者、交流深化に期待 茨城

事業着手から30年を経て、茨城県石岡市と同県桜川市を結ぶ上曽(うわそ)トンネルが27日、開通した。多額の事業費や用地買収の遅れで、長らく「幻」と呼ばれてきたトンネル。工事で軟弱な地盤や湧き水などに苦しめられながらも地域の悲願がついに達成され、両市の関係者は喜びに沸いた。
トンネルの石岡市側は一年を通して果物狩りが楽しめる観光果樹園が点在し、有機野菜栽培も盛んな八郷地区。JAやさと組合長の神生(かのう)賢一さん(72)は「物流を含めてかなり円滑になる」と語り、人とモノの交流深化に期待を寄せる。県西地域のJAなどと連携強化を図りたい考えで、将来は野生鳥獣肉(ジビエ)などを扱う新たな直売所や交流施設の整備も視野に入れる。
観光面でも誘客への期待は高まる。いばらきフラワーパークの企画・広報担当、大塚悦子さん(48)は「県西方面からの来場者が増えてもらえればありがたい」と語り、10月に始まる秋バラやイルミネーションなど各種イベントへの来場者増を見込んでいるという。
トンネル整備事業は1995年、県事業として着手したが、2001年の着工後に計画は事実上の休止状態に陥った。大きな転機を迎えたのは石岡、桜川両市が事業主体となった18年以降。国の支援を受けて工事が再開し、軟弱な地盤の一方、硬い花こう岩に苦しみながらも掘削作業を進めてきた。
トンネル西側の桜川市でも、関係者や市民らが開通を喜んだ。
この日の通り初めに参加した白田信夫県議は「皆さんと一緒に安全なトンネルを通ることができて感無量だ」と語った。
見学に訪れた桜川市、介護職員、柴千加子さん(66)は「雪が降ると何日も通行止め。このトンネルをずっと待っていた」と笑顔で語った。桜川市側から見ると、石岡市側は「山向こう」の存在。「遠く感じていたが(開通で)身近になる」と喜んだ。