中心市街地の共有オフィス 水戸市が廃止方針 26年2月末めど 役割終了と判断 茨城

茨城県水戸市が中心市街地に設置している共有オフィス「コワーキングスペース水戸Wagtail(ワグテイル)」(同市南町3丁目)について、市は来年2月末をめどに廃止する方針を固めた。8日の市議会産業消防委員会で、市執行部が明らかにした。事務所を開く資金のない若手起業家らの作業場や法人登記先として利用され、創業支援事業も行ってきたが、民間のコワーキングスペース事業者が増えたことから一定の役割を終えたと判断した。
水戸ワグテイルは2016年3月、開所した。ビルの1、2階を利用したフロア計254平方メートルには、机や椅子のほか、Wi-Fi、3Dプリンターなどが整い、カフェスペースやプロジェクター付きの交流空間が設けられている。
市は約2000万円かけてビルを改装し、備品を整備。施設名は市の鳥「ハクセキレイ」の英名「ホワイト・ワグテイル」にちなむ。若手の起業家が集まり羽ばたいてほしいとの願いが込められた。運営は市商業・駐車場公社が担っている。
これまで、創業支援の拠点として活躍した。オフィスを借りる余力がない若手起業家などが利用。創業支援のセミナーや中小企業診断士による無料の創業・経営相談会も開かれる。
市によると、開所当時はJR水戸駅周辺に、業種の異なる人たちが同じオフィスをそれぞれの仕事場として使う「コワーキングスペース」はなかった。だが、コロナ禍を機に状況は一変。リモートワークが広まり、現在は同駅周辺で民間5社がコワーキングスペース事業を展開する。影響で水戸ワグテイルのコワーキングスペース利用者は減少。19年度の893人をピークに、昨年度は560人にとどまった。一方、創業支援事業の利用者は増え、昨年度の施設の総利用者は延べ2956人と過去最高に上った。
施設の収入は利用料で年間85万~250万円ほど。テナントの賃借料を含め年間約2000万円を支出する市は、存廃の検討を進めていた。市商工課担当者は「民間のコワーキングスペースも増え、当初の役割を終えたと判断した」と説明。「創業支援事業は来年度、別の場所で続ける方向で考えている」とした。