元力士・大至さん 音楽チーム 各地で公演、平和歌う 「人生迷った人の支えに」 茨城
元大相撲の幕内力士で歌手の大至伸行(だいしのぶゆき)さん(57)=茨城県日立市出身=が新たな芸能人生を踏み出し、活躍の場を広げている。角界から歌の世界に進んで20年余り。一時は路頭に迷う苦しい時期を経て、2年前にプロデューサーを招いた「チーム大至」というグループを始動。今年は戦後80年に関連したコンサートを各地で開き、未来の平和を歌に込める。大至さんは「人生で迷った人の支えになり、聴いて喜びを感じてもらえればありがたい」と歌い続ける。
大至さんは1984年に大相撲で初土俵を踏み、通算で幕内23場所、十両30場所を務めた。2002年3月場所で引退。相撲甚句に定評があり、巡業や花相撲、断髪式で重宝された。角界に残る道もあったが、「大好きな歌で夢を追いかけたい」と03年に歌手としての活動を本格的に始めた。
舞台にも出演するマルチ歌手として活躍。一方で一時は歌の仕事が少なく、夜は別の仕事をこなした。苦しさに涙を流し、眠れない日々を過ごした。大至さんは「路頭に迷うような時期もあった。家族を抱え、もうそろそろ潮時かなとも。それでも歌が自分の人生を助けてくれた」と振り返る。
23年に所属事務所を退社し、「TEAM DAISHI(チーム大至)」を結成。プロデューサーにはオペラなどの演出を手がける輪嶋東太郎さんを招いた。高度な発声法も身に付け、演奏はイタリアで活躍し日本に拠点を持つピアニスト、クリスチャン・アガピエさんが担う。昨年6月からは東京都内で2カ月に1回の頻度でコンサートを開催。輪嶋さんは「常に挑戦し続ける姿は第二の人生を歩む人たちに希望と勇気、励ましを与えてくれる」と語る。
今年は戦後80年で「長崎の鐘」などの曲を取り上げ、平和の尊さを歌う。大至さんは父親が予科練生を経験しており、「戦争は人ごとではない。各地で争いがやまない中、平和への思いを歌いたい」と訴える。
投げ銭スタイルという独自のコンサート方法を取る。歌を聴いて満足度に応じて終演後に入場料を支払う。「一度聴いていただき、応援団になってほしい」との思いを込めた。「人生は常に勉強。いろいろな人に救われてきたので、歌で恩返しをしたい」。言葉に力を込めた。
大至さんは30日午後3時からと同7時からの2回、日立市幸町の日立シビックセンターホールで投げ銭式の公演「ドスコイ歌舞台」を行う。問い合わせはteam_daishi@hallmarks.tokyo.jpへ。












