財務会計に自律型AI 茨城県、審査業務で検証 本年度
茨城県は庁内業務で、人が介在しない自律型AI(人工知能)の導入に向け、実証に乗り出した。特性の異なる複数の生成AIを組み合わせ、法令や書類の確認、支出審査など一連の事務処理を自動化し、業務効率化や精度向上を図る。本年度は財務会計の審査業務で検証を進めていく。来年度以降に対象業務を拡大することを目指す。
自律型AIは人による指示や目的を理解し、必要な情報の収集や判断、処理を自ら行うソフトウエアで、「AIエージェント」と呼ばれる。質問への回答にとどまらず、条件に応じた適切な処理を実行するなど、人の手を介さずに一連の業務を自動で行う。
県は9月から、財務会計の分野で自律型AIを活用した実証を始めた。調達の際に必要な項目や資料を登録すれば、入札や契約、納品、検査などの内容と、支払いの法的根拠や正当性などを自動で照合し、適正を判断する。
事業者ごとに異なり、定型でない文書の内容判読についても、処理に組み込めるようにした。県情報システム課は「人の目と同じレベルで幅広いチェックが行える。複数の職員が担う作業で1人をAIエージェントに置き換えることができ、業務の省力化につながる」と期待を寄せる。
9~10月には自律型AIの活用可能性を探るため、各部局を対象にアンケート調査を実施。調査結果を踏まえ、本年度中にも実際に活用できる業務を絞り込んだ上で、来年度以降の導入を目指す考え。
このほか、県は本年度、地方自治法や公務員法、財務、職員規則などに特化した独自のAIシステムを構築。財務会計や人事労務、高圧ガス、医療法関連の専門的な4分野の庁内業務に関し、キーワード検索にとどまらない的確な情報提供を実現した。
異動直後の職員でも正確な対応ができるよう支援し、業務の迅速化や効率化を促す。今後はほかの分野にも段階的に対象を広げていく予定だ。
県は2023年に、生成AIの利用ガイドラインを策定。目的の明確化や匿名性が高い情報の制限などのルールを設け、安全性の対策も図った。同課は「セキュリティー対策を講じながらAIが担う業務を拡大し、効率化や正確性を図る」としている。












