御船祭ユネスコ勧告 「世界的な行事に」 地元住民、喜びと期待 北茨城
茨城県北茨城市大津町に約300年前から伝わり、5年に1回行われる大祭「常陸大津の御船(おふね)祭」が11日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しになった。祭りを継承する保存会や地元住民からは「大変うれしい」「世界に認められる」など、喜びと期待の声が上がった。
御船祭は同所の佐波波地祇(さわわちぎ)神社の祭礼。神輿(みこし)のほか御船歌を唄う水主(かこ)や囃子(はやし)方らを乗せた神船が町内を練り歩き、豊漁と海上安全を祈願する。
全長約15メートル、重さ約7.5トンの船には車輪がなく、「ソロバン」と呼ばれる木枠を路上に敷き、500人ほどの人力で船体を左右に揺らしながら引く。保存会によると、漁船の陸上渡御は全国的にも類例がない。
無形文化遺産への登録がほぼ確実となり、同保存会の山形義勝会長(77)は「大変名誉なことで身が引き締まる思い。先輩方がつくった伝統を守っていきたい」と喜んだ。
世界的な知名度向上の機運も高まる可能性があり、「認知されることで担ぎ手や引き手が増加することも期待する。世界的な行事にできるよう頑張っていく」と意気込みを示した。
一般市民や観光、飲食関係者からも期待の声が聞かれた。同市大津町の伊藤登美子さん(84)は「祭りは地元の誇り。子どもの頃から毎回楽しみにしているので、うれしさは格別」と笑顔を見せ、「(正式に決定するのが)待ち遠しい」と話した。
市観光協会の渡辺悦夫副会長(73)は「北茨城が脚光を浴びるのでありがたい。観光や宿泊業にとっても明るいニュースになった」と歓迎。「世界に北茨城の伝統文化をアピールできる」と声を弾ませた。
祭事船が保管・展示されている市漁業歴史資料館「よう・そろー」の敷地内で、飲食店を営む村上直之さん(62)は「うれしい限り。観光客が増えて地元が盛り上がってくれると良い」と笑みを浮かべた。
常陸大津の御船祭は2017年に国の重要無形民俗文化財に指定された。政府が24年3月、既にユネスコの無形文化遺産に登録されている「山・鉾(ほこ)・屋台行事」への追加を申請。文化庁は11日、ユネスコ評価機関が追加登録するよう勧告したと発表した。












