茨城・役所車突入 男に懲役13年判決 殺人、暴行の故意あり、完全責任能力認定 水戸地裁
2023年に茨城県日立市役所の広場で車を走らせ人をはねて殺害しようとし、さらに同県東海村役場に突入したとして殺人未遂などの罪に問われた日立市久慈町、無職、益子泰被告(55)の裁判員裁判判決公判が14日、水戸地裁で開かれ、有賀貞博裁判長は完全責任能力を認め、懲役13年(求刑懲役15年)を言い渡した。広場で意識障害が生じたとする弁護側の主張を退けた。
判決理由で有賀裁判長は、広場を車で走行した事件当時、周囲の状況を把握した的確な運転操作をしていたとし、事故後に撮影されたCT・MR画像に関する医師の所見も踏まえ「意識障害の疑いは一切認められない」とした。
さらに、広場での事件後、母親に対し「あと何人の死体を積み重ねればいいんだ」などの発言をしていたとし、殺人や暴行の故意があったと認めた。事件後、警察の車が付いてくるか母親に確認するなど、違法な行為をしたと認識していたとして「完全責任能力が認められる」と述べた。
量刑で、犯行は広場で開かれていたイベントの参加者を無差別に対象とし、短時間に多くの死傷者を生じさせかねないとして「危険で相当悪質」と指摘。母親にクレジットカードを利用停止した理由を問いただしたが、望んだ反応がなかったため騒ぎを起こしたとして「甚だ身勝手かつ短絡的」と指弾した。
村役場での事件の動機や経緯については「多額の損害を生じさせており、酌むべき事情は見当たらない」とした。
判決文などによると、益子被告は23年12月6日午後0時58分ごろ、日立市役所の広場で行われていたイベント会場に車を時速約47キロまで加速して突っ込み、衝突させるなどして参加者3人に重軽傷を負わせた。さらに同日午後1時29分ごろ、東海村役場の玄関に車を突入させ、自動ドアや建物内のオフィスチェアなど12点(損害額計約942万円)を損壊した。
益子被告は上下紺色のジャージーにマスク姿で出廷し終始無言だった。
■「社会的影響は甚大」 日立市長、東海村長
水戸地裁の判決を受け、日立市の小川春樹市長は被害者らに「心からお見舞いを申し上げる」とした上で、「このような事件はいかなる事情があっても二度とあってはならない。引き続き安全で安心なまちづくりの推進に努めていく」とコメント。
東海村の山田修村長は、判決内容についての発言は控えるとする一方、「被告が起こした事件により、多くの住民に不安を与えるなど社会的影響は極めて甚大だった。しっかりと改悛(かいしゅん)してもらいたい」とした。











