桜の老木、時計や器に 日立・平和通り 植え替えで伐採、本格活用 茨城
茨城県日立市は、戦後復興の象徴となり「日本のさくら名所100選」に選ばれている市内「平和通り」の桜並木について、定期的な植え替えで発生した伐採木の活用に本格的に乗り出した。2019年度から7年間で伐採と植樹の更新作業を行い、従来廃棄してきた伐採木を保存。まずタンブラーや時計を制作し、市民に配布したほかマラソン大会の副賞として提供を予定する。今後も物語性や環境配慮を打ち出し、活用の幅を広げたい考え。
市は活用策の一環で、伐採して保存しておいた桜の木材でタンブラーを500個加工。粉末化した木材とプラスチックの原料と混ぜ合わせて飲み物の器に成形した。今年4月のハーフマラソン大会「さくらロードレース」に合わせ、希望者を募り市民150人に無償で配ったほか、桜の保全活動の参加者にも配布。残りも有効活用を検討する。
今月には掛け時計(幅25センチ、縦45センチ)を制作。桜の無垢(むく)材に市のキャラクターや風景、花の模様をあしらった。4個を作り、16日に市内で開かれるフルマラソン大会で男女の優勝者への副賞として提供される。
いずれも木材卸会社、八千代商事(同市若葉町)が企画・制作した。福地美喜副社長は「大枝20本、800キロの木材を預かっており、いろいろ活用できる。行政と連携し、次世代につなぐ取り組みを通じて、桜のまち日立を多くの人に知ってもらいたい」と語った。
同市の桜は、日立鉱山の煙害克服のため煙に強いオオシマザクラを山に植えたことが端緒となっている。公園や住宅地、街路にも広げようと企業、行政、市民が一体で活動。甚大な被害を受けた戦争からの復興の一環でソメイヨシノが植えられ、春のさくらまつりをはじめとする県内有数の名所となった。
市内には1万4000本の桜があるとされる。市は22~31年度の10年間の基本方針を定めた「さくらのまちづくり基本計画」を策定。主に市有施設で樹木の維持に取り組んでいる。
平和通りはJR日立駅から国道6号までの1キロに約120本のソメイヨシノが植えられている。かみね公園(約千本)とともに名所100選に選ばれた。老木を新しい木に植え替える更新を進めている。
伐採木は従来廃棄物として焼却処分されてきたが、活用を模索。市内福祉作業所が食卓や文具用の小物の試作品を制作したほか、公共施設でのベンチや家具などでの利用や製品販売など可能性を探っている。
市さくら課の湯田健一さん(60)は市民アンケートで伐採木の活用に好意的な意見が多かったことを踏まえ、「物語性を前面に出し、市内外の人に桜を大事にする思いを共有するきっかけにできれば」と期待を込めた。












