磯崎新さん建築、全貌迫る 没後初の大規模回顧展 代表作の模型、スケッチ紹介 茨城・水戸芸術館
2022年に91歳で死去した建築家、磯崎新さんの没後、国内初となる大規模回顧展「磯崎新:群島としての建築」が、自身が設計を手がけた水戸芸術館(茨城県水戸市五軒町)で開かれている。戦後の日本建築界をリードした磯崎さんは、都市計画の視点を併せ持ち、独自の表現と理論を展開。現代美術や評論にも関心を寄せた文化人としても知られた。本展では、国内外で携わった代表作やプロジェクトを紹介。模型やスケッチ、映像などを集め、60年を超える活動の全貌に迫っている。
磯崎さんは1931年、大分県大分市生まれ。東京大工学部建築学科を卒業後、日本のモダニズム建築の創始者、丹下健三に約10年間師事した。
63年に独立後、国内外で活躍。80~90年代の代表作としてロサンゼルス現代美術館や群馬県立美術館などが挙げられる。近年はカタール国立コンベンションセンター(2011年開館)、上海シンフォニーホール(14年)などを設計。19年には「建築界のノーベル賞」と称されるプリツカー賞を受賞した。
建築の枠を超えた文化人としても知られる。著作活動をはじめ、芸術家や知識人とのコラボ、展覧会の企画・運営などを通じ、文化論や批評分野で卓越した地位を確立した。
本展は、単一の領域にとどまらない磯崎さんの活動の軌跡を俯瞰(ふかん)的に紹介。1960~2010年代に手がけた建築や都市構想を中心に、模型や図面、スケッチ、版画や水彩画、映像など約200点を集めた。
模型は、ロサンゼルス現代美術館やカタール国立コンベンションセンターのほか、新都庁舎コンペ(1985~86年)で提案した低層階の庁舎建物、米フロリダにあるティーム・ディズニー・ビルディング(91年)など代表作を網羅。茨城県関連ではつくばセンタービル(83年)や水戸芸術館(90年)を取り上げている。
ほかに70年代の主要建築をシルクスクリーンで表現した版画シリーズ、80年代後半から90年代前半の建築をモチーフにした水彩画シリーズを展示。自らキュレーション(企画・監修)を務めた国内外の建築プロジェクトも紹介している。
同館の井関悠主任学芸員(47)は「磯崎さんの他界後、日本では大規模な回顧展はなかった。携わった水戸芸術館は時代に先駆けた空間設計がなされ、使い手への配慮も行き届いている。館で働く者として、磯崎建築の全貌を伝える機会としたい」と話す。
会期は来年1月25日まで。同館(電)029(227)8111。












