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腹話術の技 伝承に力 茅根ゆかりさん、飯村利香さん 交通教室で活躍 若手警官向けに授業 子どもたちの安全願い 茨城

腹話術人形「けんちゃん」と一緒に、子どもたちに交通安全の大切さを伝える茅根ゆかりさん=笠間市平町
腹話術人形「けんちゃん」と一緒に、子どもたちに交通安全の大切さを伝える茅根ゆかりさん=笠間市平町
警察官にけんちゃんの持ち方を指導する飯村利香さん(右奥)=茨城町上石崎
警察官にけんちゃんの持ち方を指導する飯村利香さん(右奥)=茨城町上石崎


茨城県警交通総務課に腹話術のベテラン職員がいる。交通巡視員の茅根ゆかりさんと飯村利香さん=ともに(54)=の2人だ。人形「けんちゃん」を通して35年間、子どもたちに交通安全を伝えてきた2人は今夏、県警初の腹話術の「技能指導官」に指定された。それぞれ「子どもたちが事故に遭わないよう、技術を伝えていきたい」と県警内での伝承へ意気込み、これからも幼児・児童らを魅了し続ける。

「けーんちゃーん」

10月中旬、同県笠間市平町のともべ保育所。園児らの元気な声を合図に、茅根さんとけんちゃんが登場した。

「道路に出るときは?」。茅根さんが問いかけると、けんちゃんは「ピタッとトマト!」と答え、園児らはすかさず「止まるんだよ!」と指摘した。

けんちゃんは、食いしん坊で少し忘れん坊の5歳児。教室では、交通安全で大事なことを一つ、子どもたちと覚える。約10分間の2人の軽妙な掛け合いに、園児らは終始夢中だった。

両親が警察官だった茅根さんは、警察官を目指す中で交通巡視員の仕事に出合った。駐車違反の取り締まりや交通整理などをしながら、けんちゃんとは入職当時から一緒に交通安全教室を行ってきた。

「子どもが好きで、楽しく大事なことを学んでもらえる」と、やりがいを感じている。

腹話術には、難しさもある。地声と裏声を使い、一人二役で話すため「役割が入れ替わってしまうこと、せりふを忘れてしまうことがあった」と2人。地道に努力を重ね、確かな技を身に付けた。

卒園・小学校入学時期を中心に年間約200回ある交通安全教室の大半は、2人が担う。女性警察官の増加に伴い、交通巡視員の採用は1997年を最後に終了。現在、県警内で腹話術の技術を持つ人は少ない。

こうした状況を背景に県警は8月、2人が持つ技術を伝承しようと動いた。従来、犯罪捜査や鑑識、交通規制などの分野で豊富な経験と専門的な技術や知識を持つ人が選ばれてきた「技能指導官」への指定だ。

10月には早速、交通部を志す若手警察官向けの授業に腹話術を盛り込んだ。同指導官として講義を担当した飯村さんは「失敗を恐れず、まずはやってみてほしい」と後輩らに助言。「少しでもできる人、経験者を増やしていきたい」と後進育成に意欲を示した。

「けんちゃんと一緒だから(交通安全を)覚えてもらえる。子どもたちが事故に遭わないよう、技術を伝えていきたい」。2人は、子どもたちを引きつけるけんちゃんの力は今も昔も変わらないと信じる。

けんちゃんが教室の最後に、必ず伝える言葉がある。「次会う時まで、事故に絶対、絶対、遭わないでね!」。願いを胸に、2人とけんちゃんの交通安全教育は続く。



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