サツマイモ基腐病確認1カ月 「持ち込ませない」徹底を 農研機構 激発、収穫皆無の事例も 茨城
茨城県内で3年半ぶりとなる病害「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」が同県ひたちなか市で確認されてから5日で、1カ月がたつ。市内ではその後、感染判明が相次ぎ、県は緊急事態宣言を一時発令した。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、同県つくば市)は、他県で作付面積の7割超で発生し大幅な減収につながった例があるとし、「持ち込ませない」対策が重要と指摘する。現在も警戒が続く中、基腐病がもたらす影響や有効な対策について農研機構に聞いた。
サツマイモ基腐病は糸状菌(カビ)によって発生する土壌病害。地上部の生育不良、葉と茎が変色するなどの症状が出る。地面との境(地際)の株が感染すると地下部のイモの腐敗を引き起こす。
2018年に鹿児島、宮崎、沖縄各県で発生が初めて確認されて以来、年を追うごとに発生が確認された都道府県が増えた。今年10月までに36都道府県で、発生を知らせる「特殊報」が発表されている。
■急速に拡大も
農研機構によると、病原菌は主に種イモや苗から持ち込まれる。畑に定植する前の段階で苗床に植える種イモが病原菌に感染した場合、育った苗も感染し、植物残さによって苗床の土が汚染される。感染した苗を植えた畑の土壌にも汚染が広がる。
収穫後は畑などに残った茎、葉、イモなどが次作の伝染源になる。収穫時には健全に見えたイモが貯蔵中に腐敗し、接触した周囲のイモへ伝染することもあるという。
発病株が少なければ基腐病の発生に気付かないまま栽培を繰り返し、土壌の汚染が急速に広まることも。1年目はわずかな発生であっても、対策を取らない場合は数年後に激発して収穫皆無となる恐れがある。
鹿児島県では21年、作付面積に対する基腐病の発生割合が75%となり、大きな減収要因となった。
■県の対応評価
基腐病がまん延している地域での防除対策について、農研機構の担当者は病原菌を畑に「持ち込まない」「増やさない」「残さない」の三つの対策を組み合わせて行うことが基本だと強調する。
生産者に向けて、「ほ場(畑)をよく観察し、生育が異常な株などを見つけたら速やかに(関係機関に)連絡、相談することが推奨される」と呼びかける。
一方で、未発生地域では無病の種イモや苗の確保、適切な消毒、病害発生のない清浄な苗床の確保などによる「持ち込まない」対策の徹底が必要とする。
県独自の緊急事態宣言、発生地域での緊急対策などを実施した県の対応に関しては「新たに発生した地域では初動対策が重要。地域全体で取り組んでおり、特に大きな課題は見受けられない」と評価した。












