待ちわびた凱歌 鹿島J1制覇 場内一体、歓喜の輪
夕暮れのスタンドに凱歌(がいか)が響いた。サッカーJ1リーグ部(J1)最終戦で6日、鹿島アントラーズは横浜F・マリノスに2-1で勝利し、9季ぶりにリーグ王座を奪還した。長い雌伏の時を越えて、ようやくつかんだ栄冠。試合が行われた茨城県鹿嶋市神向寺のメルカリスタジアムのサポーターや、同スタジアムで30年以上売店を営む地元飲食店主らは、それぞれ万感の思いに包まれた。
街のボルテージは朝から静かに上がっていた。同市宮中の鹿島神宮周辺にはユニホーム姿の参拝客が行き交った。同市商工会青年部では約20人が必勝祈願。青年部長の三次義友さん(42)は「絶対優勝すると信じて祈った。応援の力は必ずある。自分も現地で後押しする」と語った。
サポーターが集う南側ゴール裏スタンド周辺は早くから長蛇の列ができた。開場前には列を見下ろすスタジアム通路にマスコットのしかおファミリーが登場。けがで欠場している選手のユニホームを掲げ、チーム一丸で戦う思いを伝えた。同県守谷市松前台、鈴木航さん(26)は前回の優勝からの日々を振り返り「退団した選手やスタッフもいる。その思いも背負って優勝してほしい」と願った。
試合開始約1時間半前、選手を乗せたバスがスタジアム入り。道路沿いに多くのサポーターが集まり声援を送る。3万7000人を超える観衆が詰めかけた大一番。ゴール裏の応援に合わせ、指定席の観客も手拍子を鳴らし、場内が一体となって選手を後押しした。前半20分、FWレオセアラ(30)が右足ボレーを突き刺し先制。ホームのサポーターに向かって攻めた後半12分に同選手が頭で合わせ2点目を奪うと、スタンドでは観客同士がタッチを交わし、肩を組んで喜び合った。
試合終了と同時に、ピッチには選手たちの歓喜の輪が広がった。サポーターは「われらJリーグチャンピオン」と優勝時に歌う応援歌を高らかに響かせた。
試合後のスタジアム周辺も活気が続いた。優勝記念タオルマフラーを購入した同県神栖市知手、井原康博さん(73)は「9年我慢した。久しぶりの優勝はたまらない」と感無量。同県筑西市市野辺、市立竹島小3年、水越寛菜さん(8)は「最高の気持ち。応援もいつもよりすごかった」と笑顔を見せた。
さらなる飛躍を期待する声も。同県笠間市出身で千葉県我孫子市、会社員、荒巻徹さん(39)は「国内3冠とACL(アジアチャンピオンズリーグ)もある。取れるタイトルは全部取ってほしい」と思いを語った。
■「皆さんのおかげ」 GK早川感謝の言葉 優勝セレモニー
9季ぶりのリーグ優勝を果たしたJ1鹿島アントラーズは、今季最終戦後に開かれたセレモニーに臨んだ。選手を代表してGK早川友基(26)が「鹿島アントラーズに関わる、全ての皆さんのおかげで優勝することができた」と感謝の言葉を述べた。
今季は鬼木達監督の下、「Jリーグで最後、必ず1番になろう」という目標を掲げて始動したことを回顧。勝利を重ねる中でサポーターの応援も強まり、今季のホーム戦にはクラブ史上最多の52万615人の観客が駆け付けた。見事に優勝という形で応え「日々の努力、積み重ねが結果に表れた」と実感を込めた。
常勝軍団復活ののろしを上げるリーグ制覇を果たした。来季以降へ向け客席に「われわれはまだまだ伸びしろがある。成長できる。ここからもっとタイトルを取れると思う。共に戦ってください」と呼びかけた。
■「ダービー楽しみ」 「少しでも近づく」 水戸・森監督と小島社長祝福
J1鹿島のリーグ優勝を受け、水戸の森直樹監督(48)と小島耕社長(51)がクラブを通じ、コメントを発表した。
森監督は「さすが優勝請負人の鬼木さん。J1で茨城ダービーができることを楽しみにしている」などと語り、小島社長は「同じ茨城のクラブとして、栄誉ある優勝を大変誇らしく感じる。歴史や実績、事業規模でも大きな存在である鹿島に少しでも近づき、肩を並べられるクラブとなれるよう、引き続きまい進していく」とコメントした。
■茨城新聞社が号外発行
茨城新聞社は6日、J1鹿島アントラーズの9季ぶりのリーグ制覇を速報する号外1万5000部(カラー2ページ)を発行し、鹿島神宮駅周辺や「道の駅いたこ」などで配布した。
「鹿島J1優勝」の大見出しがついた号外が午後6時ごろから配られると、駅利用者らが笑顔で受け取った。17年ほど応援し続けているという三重県桑名市の丹羽哲哉さん(31)は「最高です。待ちに待ったタイトルで、後半に2点目を獲得した時には涙が止まらなかった。鹿島は自分を勇気づけてくれる存在」と話した。東京都多摩市の宮沢由佳さん(40)は「常勝軍団と言われているが、勝てない時もあった。競り合いながら、ようやく勝てた」と語った。
■井畑滋さん悼み 選手ら喪章着用
鹿島で2010年から7年間社長を務めた井畑滋さんが1日に亡くなったことを悼み、6日に行われたJ1第38節鹿島-横浜M戦では、鹿島の選手とスタッフが喪章を着用した。
クラブとしては、井畑さんが当時社長だった16年シーズン以来の国内タイトル獲得となった。












